ジリ貧の「ビジネス書」市場に見える微かな光 安易な企画は敬遠ぎみ、本格派が求められる

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受験参考書からビジネス書へ持ち込まれたノウハウは、ほかにもあります。特徴的なものはイラスト表紙です。受験参考書には1990年代からイラストの表紙が多数ありましたが、ビジネス書でイラスト表紙が始まったのは2000年代からだと思われます。2009年の『もしドラ(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)の表紙が代表的です。

もう一つ、手前味噌で恐縮ですが、私も学生時代に予備校講師を務めた経験がありまして、そこで培ったノウハウが『さおだけ屋はなぜ潰れないのか!?』(光文社新書)で生きました。参考書や予備校テキストの文化である、まとめ頁を各章の末尾につけたのです。それまでもビジネス書にはしばしばこの形がありましたが、新書に定着させたのは『さおだけ屋~』ではないかとよく出版関係者に言われます。

このように、予備校文化はビジネス書業界に少なからぬ影響を与えてきました。結局のところ、予備校というのは教えることに貪欲で、必死です。ビジネス書も何らかの知識を伝授する媒体である以上、その創意工夫に倣うのは実に賢いやり方なのです。

また、世代移動の問題もあります。予備校でのフォーマットに慣れ親しんだ世代が、そのまま社会人になり新たなビジネス書の読者になります。予備校文化がビジネス書に影響を与え続けるのは、ある種必然なのです。

では予備校文化から少し広げて、受験業界における今のトレンドとはなんでしょう。

リクルートが運営する「スタディサプリ」をはじめ、スマホで受験勉強をする流れが加速しています。YouTubeでも授業の動画が流れています。ということは、ビジネス書の世界でもスマホの動画と連動するとか、著者が人気ユーチューバーになって、ビジネスのことを教える時代になるかもしれません。

「教える」ことについてのフロンティアである受験産業に注目すれば、必ずビジネス書界の次の一手は見えてきます。

展望2 新しい女性著者が必ず現れる

2016年に「女性活躍推進法」が施行されたことは記憶に新しいでしょう。さかのぼって昭和末期の1986年には、男女雇用機会均等法が施行されました。この2つの法律に挟まれた30年の間、待機児童やワークライフ・バランスといった問題を抱えながらも、女性の社会進出は確実に進んだと言えます。同時に、女性向けのビジネス書も多数登場しましたし、和田裕美さんや山本有花さん、竹川美奈子さんなど女性の書き手も現れました。

その中でも特筆すべきは、やはり2000年代を象徴するビジネス書作家・勝間和代さんでしょう。1997年にはワーキングマザー向けインターネットサイト「ムギ畑」を創設。その功績から、ウォールストリート・ジャーナル「世界の最も注目すべき女性50人」に選ばれました。これは売れっ子作家になる前、2005年の出来事です。ビジネス書作家として台頭したあとは、勝間さんのようなバリキャリに憧れる「カツマー」と呼ばれる信奉者が続出するなど、社会現象にまでなりました。

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