北朝鮮危機、仲介役としてスウェーデン浮上 「代金未払いのボルボ車」という貸しがある

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北朝鮮と韓国は厳密には、いまだ戦争状態にあるが、スウェーデンは、休戦の監視や査察、そして軍事演習の監視を行い、南北間の信頼を促進する目的で設立された中立国監視委員会のメンバーでもある。

北朝鮮が西側に対する懐疑的な姿勢を深めるなか、スウェーデンの中立的立場は、限定的ではあるものの、北朝鮮との「誠実な仲介役」を務めることに役立っていると、専門家は指摘する。

スウェーデンは1973年、西側の欧州諸国として初めて北朝鮮と外交関係を結び、その2年後に平壌に大使館を設置した。

当時、スウェーデンはベトナム戦争に批判的で、非同盟運動の主要な役割を担い、国際舞台で独立した立場を取る国として信頼を集めた。

対話と交流

スウェーデンは、国連や赤十字などの機関に資金提供し、北朝鮮に対して大規模な人道支援を行っている。

同国政府はまた、米国と北朝鮮の代表による対話の主催や支援を行っている。これらは政府間の直接的な対話ではないが、学術関係者や米国務省の現旧当局者らによって行われているものだ。

カナダ人牧師リム氏が北朝鮮から解放された後、スウェーデンのバルストロム外相は「北朝鮮における、われわれの存在が、対話と交流を可能にしている。この役割をとても真剣に受け止めている」と語った。

スウェーデンと北朝鮮の関係は主に領事的なものであり、核危機に対する解決策を見いだすことを目的としていないと、ある外交官は述べた。

また、事情に詳しい関係筋は、米国は領事的問題に対処できる誰かを必要としており、スウェーデンは北朝鮮の同意を得てその役割を務めることが可能だと説明。「一般的に、北朝鮮人はとても厳しい。押せば欲しいものが手に入るということはない。ただ要求を突き付けることはできない」と語った。

ただ、その一方で、スウェーデンの役割が完全に領事的というわけでもないと、この関係筋は言う。

「スウェーデンは地域の主要国と情報を共有することが可能であったし、われわれは今でもそうしている。主に情報源として行動し、情報が最も重要な関係者に確実に届くようにしている」

米朝両国は現在、国連の派遣団や、北京にあるそれぞれの大使館、朝鮮戦争の休戦協定が結ばれた板門店における軍当局者の対話などを通して、接触を持ち続けている。

北朝鮮が輸入したボルボ車については、40年以上たった今も好調のようだ。

平壌にあるスウェーデン大使館は昨年10月、北部清津市でタクシーとして使われていた走行距離が50万キロ近いボルボ車の写真をツイッターに投稿。代金は北朝鮮から「まだ支払われていない」としている。

(Simon Johnson記者、Johan Sennero記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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