「ロボットが資産運用」、貯金感覚で広がるか 簡単な質問への回答で1万円から運用可能に

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投資金額とパフォーマンスは背中合わせの関係だ。ハードルを下げようとして開始金額を下げると、運用パフォーマンスが犠牲になる。あるいは、パフォーマンスを引き上げるために、追加の費用を投じて取引などのシステムを増強する必要がある。事業者に残された選択肢はシステムの増強以外にない。

「ロボアドは総合格闘技だ」。あるロボアド業者首脳はそう語る。投資のアルゴリズムだけでなく、証券取引や税金処理のシステム、送金や決済の体制整備、アプリの開発、セキュリティ、ブランド戦略など、一般的な金融サービスやアプリの開発よりも幅広い分野に力を割く必要があるからだ。

顧客は大事な資産を預けるので、通常のアプリなどに比べてサービス内容を見定める視線が厳しい。「使ってみて、全部の要素が整っていると実感できないと、利用者はお金を入れてくれない」(同)。

優秀なエンジニア確保が喫緊の課題

ウェルスナビのポートフォリオ表示画面(写真:ウェルスナビ)

上記のような要素の品質を高めようとすると、それぞれの分野で優秀なエンジニアが必要になる。ウェルスナビ、楽ラップ、テオのトップ3は、人材採用がサービス品質向上につながり、さらに優秀な人材が集まるという好循環を作り出せている。

一方、勝ち組と負け組は早くも鮮明に分かれてきている。そのほかのロボアド業者は預かり資産が数十億円どまりで、「ロボアドに必要な要素がどこか欠けている状態だ」と、前出のロボアド業者首脳は明かす。

ウェルスナビはクレジットカードや電子マネーで買い物をする際、一定金額を自動で積み立て、ロボアドでの資産運用に振り向ける「マメタス」というサービスを5月に始めた。狙いは「資産運用に対するハードルを下げ、自社のサービスを“インフラ”として利用者の生活に欠かせないものにしていくこと」(柴山和久CEO)。ただ、投資金額は一段と少額化するので運用の難易度はさらに高まる。

この“インフラ”という言葉は、お金のデザインの中村仁CEOも重視する。「金融商品は模倣性が強く、すぐに陳腐化する。だから、銀行口座と直結させるなど、インフラになることが重要。現預金として持つのではなく、ロボアドで運用しようというマインドに変われば、競争に勝てる」。

約1800兆円の個人金融資産のうち、過半が現預金になっている日本。長年叫ばれてきた「貯蓄から投資へ」の流れを現実のものとできるか。ロボアド業者が目指すインフラ化の動きが、カギを握りそうだ。

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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