会社を良くするのもダメにするのも「社長」だ

起業の苦難を乗り越えた後にやるべきこと

ですから、起業で成功したならば、ギアを経営に切り替えないと、10年以内に倒産するかもしれない。まして30年後には、跡形もない、影も形もないということになります。

経営を成功裏に進め、長期にわたって発展する会社にするためには、社長自身が、起業家から経営者に変身しなければなりません。経営者が心掛けなければならないことは、突き詰めて言えば、4項目を挙げることができるのではないかと思います。

経営者が心掛けるべき4項目とは?

ひとつは、方針を明確に出すこと。2つ目は、衆知を集めること。3つ目は、権限を委譲すること。4つ目は、社員に感動を与えることです。

まず第1の項目。なにをするにしても、「方針」というものが必要です。何のために取り組むのか、どういう取り組み方、心構えで取り組んでいくのか。そして、最終的にどのような結果を出すのか、加えて、どのような過程をたどるべきなのか。いわゆる、基本理念と最終目標と具体的目標。この3点が「方針」の内容ということになりますが、経営者たる人たちは社員に、この「方針」をしっかりと指し示す必要があります。ただ、「頑張れ」「やってくれ」だけでも、あるいは売り上げ目標だけを提示するだけでも、経営はうまくいきません。

たとえば、マラソン。その監督が、ただ「速く走れ」だけでは、どうにもならないでしょう。「東京オリンピックのマラソンに出場しよう。そのためには、こういう練習をしてくれ」、あるいは、「こういう心構えを忘れるな」と選手を指導するとともに、「最終的にはメダルを獲ろう」。そのためには、「5キロメートル、10キロメートルのラップタイムは、こう刻んでいこう」と明確に指示しなければならないでしょう。

それと同じことが、経営にも当てはまります。「われわれの会社は何のために、この事業に取り組んでいるのか」「どういう心構えで、仕事に取り組んでいくのか」を示すとともに、「10年後には、この会社をこうしたい」、そのためには「年々、このような成果を上げてほしい」と経営者は社員に明示しなければなりません。結果が出ないのは、社員の出来が悪いという経営者が、少なからずいますが、出来が悪いのは、そのように言う経営者のほうでしょう。大抵の社員は、働くつもりで会社に入ってきているわけですから、また、経営者が、良しとしたから社員になっているのですから、出来が悪いというのは天に唾するようなものです。

経営者がしっかりと「方針」を出せば、社員は「努力の方向と、どのような成果を出せばいいのか」がわかりますから、ムダなことをする必要もなく、経営者が期待する最終の結果を出すことができるのです。この方針を明確に出さずに経営をすることは、海図と羅針盤を持たずに大海に乗り出すようなものです。ですから、起業に成功しても、経営に失敗するベンチャーが多いのは、その切り替えをしないか、できないからだということは覚えておいていいことではないでしょうか。

次ページ2つ目は「衆知を集める」
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