トランプvs金正恩は「脅し合い」にすぎない 実はもちつもたれつの関係になっている
トランプ大統領は金委員長の度重なる挑発に、軍事攻撃の本気度を試され続けているが、今も先制攻撃ができずにいる。
金委員長が今年元日の「新年の辞」で、米本土への攻撃が可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)をいつでも発射できると主張した際、トランプ大統領はツイッターで「そうはさせない」ときっぱりと述べていた。このため、6度目の核実験に加え、北朝鮮によるICBMの発射実験が、トランプ政権が北朝鮮に対して定めた「レッドライン」(越えてはならない一線)となるとみられていた。
実際、3月1日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、北朝鮮がICBMの発射実験に踏み切ろうとした場合、北朝鮮を先制攻撃する軍事オプションを米政権は検討していると報じていた。
なぜトランプ政権はレッドラインを示さないのか
しかし、日米のメディアを中心に米国による北朝鮮先制攻撃が大きく取りざたされた4月中旬、当時のショーン・スパイサー米大統領報道官は、米国が北朝鮮を攻撃する判断基準となるレッドラインについて明確に示す考えはないと述べた。
なぜトランプ政権はレッドラインを示さないのか。いくつか理由が考えられる。まず米国のレッドラインをあいまいにし、不透明にすることによって、北朝鮮を不安にさせる戦略だ。専門家の間では、Strategic Ambiguity(戦略的あいまいさ)との言葉で知られる。レッドラインをあえて言わずに、北朝鮮に対してどう出るかをわからせずにプレッシャーを与えるというものだ。
また、ほかの理由としては、バラク・オバマ前政権の失敗がある。オバマ前政権は2013年にシリアの化学兵器使用をレッドラインと規定し、シリアへの軍事攻撃に踏み切る姿勢を示したが、実際にはバッシャール・アル=アサド政権が化学兵器を使用しても武力行使を見送った。結果として、オバマ前大統領は内外から弱腰だと批判された。トランプ大統領としても、下手に北朝鮮相手にレッドラインを明確にし、北朝鮮にそれを越えるような行動を起こされた場合のリスクは甚大。それを避けたかったためとみられる。
いずれにせよ、軍事、外交の両面で北朝鮮に「最大限の圧力」をかけてきたトランプ政権であるだけに、北朝鮮の2度目にわたるICBMの発射実験は、トランプ大統領の面目や権威を潰された格好だ。
そもそも米国は北朝鮮への軍事攻撃に踏み切れない理由は何か。
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