ただ、前回のゴルディロックス相場では、FRBが5.25%まで利上げしたにも関わらず、この間株価は上昇し続け、為替相場は「円安・ドル安・高金利通貨高」が継続した。ドルの金利が上昇していく中にあっても、さらに高金利だったブラジルレアルは対ドルで2004~2007年の4年間で64%高(対円では68%)、ポーランド・ズロチは51%高(対円では55%)、チェコ・コルナは51%高(対円では47%)、豪ドル、ニュージーランドドルもそれぞれ15%程度(対円ではそれぞれ約20%)上昇した。
FRBの利上げを無視して、ドルよりも少しでも金利の高い新興国通貨に資金が向かっていた、あるいは円キャリー取引が活発に行われていたことは、明らかにリスクテイクが過熱状態にあったことを示しているといえよう。2007年6月のピーク時には、IMM通貨先物市場における投機筋の円ポジションが、過去最大の約19万枚まで「売り越し」に傾いていたことを見ても、円キャリー取引が過熱していた様子がうかがえる。
今回の宴は崩壊まで"緩く長い"可能性
しかし、過度のリスクテイクが続けば、その後は深刻な株安と円高が待っているものだ。宴の後に起きたのが、2007年のサブプライムショックと2008年のリーマンショック、つまり「100年に一度」といわれる米国の金融ショックであり、その後株価は大暴落、新興国通貨も大幅安となり、深刻な円高に見舞われた。
当時と比較して、今回のゴルディロックスは、より緩やかな景気拡大と、より低インフレの環境である。米国のGDP(国内総生産)成長率は、前回が年率2%台後半~3%台。今回は2%台前半にとどまっている。また、米国のインフレ率については、前回が年率2%台後半から3%台なのに対し、今回が1%台半ば付近から後半だ。したがって、FRBは利上げを急がず、リスクオンの地合いも、場合によっては前回のゴルディロックス相場より緩く長く続く可能性がある。
足元、トランプ政権の人事問題や北朝鮮問題に見られるような地政学的リスクなどが、しばしばリスクオフを誘い円の下支え要因となっている。しかし、ベースラインとしてゴルディロックスの環境が今後変わらず、仮に円キャリー取引が先々活発化し、円安が長期にわたり継続した場合、その後訪れる新興国通貨安や円高が大幅なものになる可能性は、数年後のリスク要因として頭の片隅に置いておきたい。さらには、もし不十分な金融引き締めのうちにバブルが崩壊すれば、政策対応余地は小さく、円高が長引きやすいというリスクも想定されよう。
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