新生銀行「レイク」買収の成否 「コストカッター」ポルテの大博打

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新生銀行「レイク」買収の成否 「コストカッター」ポルテの大博打

金融業界の「game changer(ゲーム・チェンジャー)」を自称する新生銀行が大きな賭けに出た--。

多くの金融関係者が異口同音に語るのが今回のレイク買収劇だ。新生銀行は7月11日、「レイク」ブランドで消費者金融事業を展開する「GEコンシューマー・ファイナンス」と、住宅ローンやクレジットカードなどを手掛ける子会社群を、5800億円の巨額資金を投じて取得することを発表した。

同日、本店で記者会見した同行のティエリー・ポルテ社長は「われわれは消費者金融事業には重要なチャンスが潜んでいると思っている。新生銀行は大きな役割を果たせる」と自信たっぷりに語った。

同行がGEから買収するのは、「レイク」ブランドで展開している消費者金融と、住宅ローンの「GE Money」、そして、クレジットカード・割賦販売業務の3事業だ。レイクは無人店舗1138店を全国に展開し、6860億円の債権残高を抱えている(2007年12月末現在、以下同じ)。また、住宅ローンは八つの営業拠点と1030億円の債権残高、クレジットカード事業も930億円の債権残高を保有している。GEは、貸金業法改正により経営環境が厳しくなったことを踏まえ、これらの事業の売却作業を昨年から進めていた。

ノンバンク買収の条件 金額で圧倒した新生銀

レイクの売却作業は、07年11月に第1次入札が実施され、買い手候補は新生銀行のほか、アコム、プロミスの3社に絞り込まれていた。

アコムとプロミスはそれぞれ三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループの持ち分法対象会社だ。レイクの買収に名乗りを上げたのが、大手銀行の3グループだったのは偶然の出来事ではない。

ノンバンクを買収する場合、決め手になるのは単に事業買収の金額だけではない。当該ノンバンクの有利子負債を肩代わり(リファイナンス)する能力も重要な要素となる。事業譲渡に伴い、ノンバンクに対する既存の融資先が資金の回収に動く可能性があるからだ。このため、事業を生きたまま譲り受けるには、最悪の場合、有利子負債を全額肩代わりすることが求められる。

今回の譲渡の対象となる事業の中で中核となるレイクブランドの消費者金融事業の貸付金残高は、08年3月末時点で6500億円程度。それぞれ1000億円程度の債権残高を持つ住宅ローン、クレジットカードと合わせれば、資産残高は、07年12月末現在で8840億円に上る。

「それだけの巨額資産の裏側にある有利子負債をリファイナンスできるのは大手銀行だけ」(大手消費者金融会社)という点を考えれば、最終候補として残ったのが大手銀行グループであることは必然だった。

では、新生銀行が最終的な買い手となった勝因は何か。それは何といっても買収金額の大きさだろう。アコムやプロミスが提示していた買収金額は3000億円程度とみられる。新生銀行の5800億円とは大きな開きがあった。

もっとも、消費者金融事業の買収を評価する場合、買収金額だけで良しあしはいえない。貸金業法の改正や最高裁判決を受け、現在、過払い利息返還請求が急激に拡大している。その部分に関する引当金繰り入れや過払い利息返還費用の負担を、売り手と買い手の間でどのように分担するかも買収の重要な条件となっているからだ。

この点、新生銀によるレイク買収においては、グレーゾーン金利に関する補償負担について、2030億円までは新生銀行が、2030億~2600億円までは新生とGEの両社が、さらに2600億円超の部分はGEが負担する、という取り決めがなされた。さらに新生銀が負担する最大2060億円のグレーゾーン金利関連負債は、事業譲渡の最終決定時点(08年9月末予定)でほぼ全額引き当て処理を行うという。

グレーゾーン金利にかかわるリスク資産は引当金で全額カバーされ、引当金を取り崩しさえすれば、新生銀行に損失発生は生じないことになる。しかし、そううまくいくのだろうか。実際のところ、大手消費者金融会社に対する利息返還請求のうち、2~3割は完済者なのだという。この点を考えれば、引当金でカバーした水準を超える返還金損失が発生する余地は否定できない。

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