新生銀行「レイク」買収の成否 「コストカッター」ポルテの大博打
希望退職に踏み切る新生銀 3割ルール適用回避に懸命
事業譲渡に関連する問題はほかにもある。従業員引き継ぎの有無だ。今回、新生銀以外の買い手企業候補の中には、「役職員を引き継がない」ことを買収条件として提示していたところもあった。では、新生銀行はどのような方針で臨むのか。GE側は新生銀行に従業員の雇用継続を求めているもようだが、新生銀行は買収発表の際に「経験豊かで優秀な経営陣が当行の個人関連業務分野に加わる」としているだけで、従業員2000人のリストラを行うかどうかは明確にしていない。
この点、「なんとも皮肉な話だ」と苦笑いを浮かべているのはある新生銀行マンだ。今回の買収発表があった7月11日という日は、偶然にも、新生銀にとって特別の意味を持つ日だったからだ。新生銀は本体社員を対象に希望退職を募り、応募締切日を7月11日に設定していた。
新生銀が社員に配布した内部資料によると、この早期退職支援制度の対象は「08年6月30日時点において、職位が次長以上で、かつ満45歳以上」の社員だ。さらに、同行の収益目標が過去2年にわたって未達成だった理由として、ノンバンク貸付をめぐるグレーゾーン金利に関する法規制、グローバル市場の混乱を挙げる一方、ビジネスに見合わない高いコスト構造や適正ではない要員数も業績低迷の原因として見逃せない、と説明している。
「実は、希望退職は今回が初めてではない」
元新生銀行マンがこう証言するように、新生銀は過去にも同様の退職勧奨を行っている。とはいえ、今回は3月に本店不動産を売却して間もないタイミングのことだ。社員を人的資産と見立てれば、本店不動産の売却に続く「資産圧縮」ということになる。対象となる役職員の受け止め方は、過去の比ではないだろう。
前述の文書にもあるように、新生銀は公的資金注入行に義務づけられている経営健全化計画の収益目標を07年3月期に大きく下回った。収益目標が2期連続で3割以上未達の場合、経営責任を国から求められる。この「3割ルール」の適用を受けて、ポルテ社長らは辞任に追い込まれかねなかった。
その意味で本店不動産の売却による利益計上は大きな意味を持つ。だが、本店不動産の売却は一過性の利益カサ上げ効果しか持たない。
新生銀が主要3事業のうち、コンシューマーアンドコマーシャルファイナンス部門は、貸金業法改正の影響を受けている。また、証券化などのインスティテューショナルバンキング部門の実質業務純益(クレジットコスト勘案後)も不動産市場の悪化を背景に、前期比約7割の減益になった。
構造的な問題が解消されないかぎり、一過性の利益カサ上げでは抜本的な収益改善策にならない。その意味で、コスト構造の抜本的な改革を迫られる事情はあったが、アコム、プロミスというライバル会社が足元にも及ばないような高額の買収を発表した日が、人件費削減計画の締切日だったという事実は、皮肉な組み合わせというしかない。