貸切も高速も「プレミアムバス」が増えるワケ 規制緩和に揺れたバス会社たちの生き残り策

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高速ツアーバスは道路に対する知識は限られた範囲でよく、旅行会社と契約すれば一定の稼働は保証される。ノウハウのない貸切バスの事業者にとっては参入しやすい分野になっていた。

しかし、不特定多数の利用者が片道でも利用でき、ほぼ日常的に運行する形態は長距離の路線バスにほかならない。道路運送法に基づく路線バスと、旅行業法に基づくツアーバスが同じ仕事をしてるという意味で、「一国二制度」だという指摘が生まれた。

この過程でも、2012年に金沢から東京ディズニーリゾートに向かうツアーバスが関越自動車道の防音壁に激突・大破し、多数の乗客が死傷するという重大事故が発生。この事故ではドライバーの労務管理などの問題があぶり出された。

こうした重大事故が相次いだことで、バス業界での議論の末、2012年7月に高速ツアーバスは、高速乗合バスに一本化された。続いて旅行会社と貸切バス事業者の力関係の見直しも進められた結果、2014年には貸切バスの運賃・料金制度が改められ、“価格破壊”に歯止めがかかった。

消費者が負担するバス代は増加したが、貸切バス事業者には正当な収益を確保する道筋ができた。価格破壊が是正されるのであれば、差別化を図る意味もある。こうして「金太郎飴」状態から一頭地を抜け出したバスが各地に誕生する。それが前段でご紹介したプレミアム路線を走るバスたちである。

バスのプレミアム路線は続くのか

JTB首都圏が企画・販売するバスツアー「ロイヤルロード・プレミアム」のバス。定員はわずか11名だ(写真:バスラマインターナショナル)

プレミアムバスが増えるかどうかは、利用者に飽きられず、稼働率を維持できるかという需要動向に懸かっている。現状では定年を迎えた団塊の世代など、潜在的な顧客層が増えているが、10年後に定年を迎える人々は経済環境が大きく異なるだろう。

貸切バスの将来はどうなるか。自動車を取り巻く技術では超小型コミューターや自動運転といったキーワードが目につくようになってきたが、40人なり50人なりの人々を経済的に運べる輸送手段は将来においてもバス以外には考えられない。これがバスの本質だからである。

この点、貸切バスの将来は安泰なのだが、経験豊富なドライバーが不足してバスを動かせなくなる可能性もある。豪華な車両と質の高いサービスの提供にあこがれを感じ、ドライバーを志す人がいれば、人手不足を補う鍵となるかもしれない。

走る姿が注目を集め、乗客が優越感に浸れるバスの運転もドライバーのプライドを支えている。プライドを持ったドライバーが運転するバスは安全なはずである。

和田 由貴夫 『バスラマインターナショナル』編集長

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わだ ゆきお / Yukio Wada

1953年(昭和28年)東京生まれ。東京都立航空工業高等専門学校機械工学科卒。1976年よりバス研究家としてバスに関する執筆活動を始める。1980年から『モータービークル』誌の編集者を経て、1990年5月に独立し、ぽると出版を立ち上げる。同年8月には『バスラマインターナショナル』、1996年には『ワーキングビークルズ』を創刊。ぽると出版代表、『バスラマインターナショナル』編集長。

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