一方で、実際に女性上司の下で働いている人は「女性がいい」という回答の割合が高く、「一緒に働いたことのない人々ほど、女性上司にネガティブイメージを持ちやすい」という可能性もある。しかし、なぜも、これほどまでに「女性上司は嫌われるのか」。その背景として、しばしば指摘される要因のひとつに、「女王蜂シンドローム」説がある。
これは、1974年にミシガン大学の研究者らによって命名されたもので、「男性社会の価値観を受け入れ、男性のように仕事をし、男性優位主義社会や組織をはい上がってきた女性は、自分たちの地位やテリトリーを守りたがり、権力を奪われないように、ほかの女性に手を差し伸べない」という考え方だ。映画『プラダを着た悪魔』のメリル・ストリープ演じる鬼編集長のあのイメージが思い浮かぶだろう。
女王蜂は男性のようにがむしゃらに働くことに慣れているがために、男性と働くことが楽だと感じており、「子供が病気なので休みたいという女性に同情心を感じない」(英デイリー・メール紙)、「私も男性に負けずにやってきたのに、なぜ、あなたもできないの?となる」(米『Forbes』誌)。女性をもり立てようとするより、男性の部下の面倒を見たがるのだという。
上司が女性だと女性は病気になりやすい
「職場で、女性は女性を十分にサポートしていない」。これはアメリカを代表する女性経営者でペプシコのインディラ・ヌーイCEOの言葉だ。2008年のカナダのトロント大学の研究では、女性の上司を持った女性は鬱、頭痛、不眠症などの病気にかかりやすいという結果が出た。
また、2014年のハーバード大学の研究では、上下関係にある女性研究者同士が協力し合うことは、男性同士の場合より難しいという結論だった。同格の女性同士の場合は問題ないが、ランクの異なる女性同士において協力関係は成り立ちにくいというのだ。
女性は同格の女性とはうまくコミュニケーションを取れるが、そうではない女性との人間関係に難しさを感じるという仮説である。一般的に、女性は人を育てたり、協力し合い、男性は競争するというステレオタイプな見方がある中で、この結果は驚きをもって受け止められた。
これはまさに、かつて、沢尻エリカさんの主演で話題になったドラマ「ファーストクラス」の中で流行した、「マウンティング」といわれる行為に通じる。マウンティングとは本来、霊長類が優位性を示すために、相手に馬乗りになって交尾をすることを意味するが、人間関係において、「自分が上」と格付けしようとする行為を意味する言葉として使われるようになった。
ほかの女性に対して、自分の優位性をアピールする「マウンティング女子」として、2014年の流行語大賞にノミネートされた。男性は職位や年齢などによって、比較的簡単に上下関係が定まるが、女性の場合、容姿、家庭環境など、評価軸が多くあり、そういった単純な枠組みでは力関係を定義できないという考え方だ。そこに、一筋縄ではいかぬ複雑な人間関係が生まれる、ということだろう。
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