好調日立を悩ます「南ア火力発電事業」の行方 三菱重工の請求額は7743億円、争いは仲裁へ
溝が埋まらないまま、争いの決着は外部機関での仲裁に委ねられた。
7月31日、三菱重工業は南アフリカでの石炭火力発電プロジェクトをめぐって日立製作所に約7743億円超の支払いを求めて、国内の商事紛争の仲裁機関である日本商事仲裁協会(JCAA)に仲裁を申し立てた。
争いの種となっているのは、日立が2007年~2008年に受注した石炭火力発電用ボイラー12基、総受注額5700億円のプロジェクトだ。
火力発電事業のパートナー
2014年2月に三菱重工と日立は火力発電事業を、合弁会社(三菱重工65%、日立35%)の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)に統合した。 事業統合に当たり、仕掛かりだった南アのプロジェクトは、統合前は日立が、統合後はMHPSが責任を持つことを前提に、三菱重工に譲渡された。
しかし、最終譲渡金額の調整がつかず、三菱重工は2016年3月末に日立に約3790億円を請求。2017年1月末には請求額を約7634億円に引き上げた。
この2つの金額の違いは何か。
大まかに言えば、3790億円はプロジェクトで発生すると見込まれる実際の費用超過額だ。南アプロジェクトはもともと2011年に予定していた1号機の運転開始が2015年になるなど工事が大幅に遅延しており、関連費用が膨れ上がっている。
7600億円超という金額は、日立が事業を継続していた場合に出たであろう損失額。差額の約4000億円はMHPSが改善した金額ということになる。
三菱重工は契約上、後者(7600億円強)の金額を請求する権利があり、当初の3790億円の請求時点では権利を留保していただけと主張する。日立は「根拠に欠ける」と支払いを拒否しつつ、「契約に従い内容を精査している」とする。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら