フランス高級ワインは日本で高値を崩せない 関税撤廃で欧州ワインは日本に押し寄せるか

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オーストラリア・メルボルン近郊の高級ワイナリーに団体で訪れていた中国人観光客(筆者撮影)

確かに、オーストラリアのワイナリーをいくつか取材したときに目に付いたのは、中国人の団体観光客。中には、パンダの描かれた大型バスで乗り付け、ワインを箱で爆買いする光景も目にした。また、近年上海や北京などの大都市では、高価格のEU産ワインをリストに取りそろえる高級レストランが増えている。

「それに――」。オーナーは少し声を潜めて続ける。

「日本は1990年代のワインブーム以降、思ったよりもワインの消費量が伸びてこない。もちろん、少しずつ伸びてはいるけれど、ニューワールドのワインに興味を示すような層がまだ成長してないのが現状かもしれない。やはり、フランスやイタリアなど知名度のあるワインが人気を集めている。だから、あまり期待はしてないよ」

確かに、日本国内でのワインの消費数量は、4年連続で過去最高を更新しているものの、1人当たり年間でわずか3.2リットル(2015年)にとどまっている。世界に目を向けてみると、ポルトガルは54.0リットル、フランスは51.8リットル(国際ワイン・ブドウ機構の統計)など、その消費量たるや、日本人のおよそ17倍にも上る。これを見ても、清酒やビールなどと比べてワインはまだ日本において一般的になじみが薄いことがわかる。

ただ、すでに関税撤廃に先立ち、大手スーパーなどでは、EPA合意のニュースに合わせ、大々的にセールを展開するなどして、EU産ワインの販売を加速させる動きもある。こうした動きが消費意欲をかき立てる要素になり、日本へのワイン輸出を手掛けるEUのワイナリーにとっては追い風となりそうだ。

EU産のワインで、掘り出し物を見つけるという楽しみも出てきそうだ。日本国内での輸入ワインのうち、1%前後にとどまるハンガリーのトカイワインやスペイン・リオハ産のワイン、ドイツのリースリングなど、比較的リーズナブルなワインは、関税撤廃の恩恵を受けやすいかもしれない。

(左)ハンガリーはトカイ地方の貴腐ワインが有名だが、良質な白ワインも実は豊富。(右上)ドイツのライン川沿いの斜面にはぶどう畑が広がる。(右下)スペイン・リオハには歴史あるワイナリーが点在。日本でもリーズナブルなスペイン産ワインを目にする機会が増えた(筆者撮影)

原産地呼称問題「シャンパン風」などは使えない…?

ただ、うれしい悲鳴ばかりではない。国内からは、戸惑いの声も上がっている。それは、地理的表示(GI)保護の問題だ。今回の合意では、伝統的な食品産地のブランドを互いに保護することも盛り込まれている。しかし、そこで難しい対応を迫られるのは、「シャンパン」や「ボルドー」など、日本でもなじみ深く浸透している品名である。

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