「ライターで稼ぐというのは、アイドルとしてファンと対等な関係を築くために、とても大事なことだと思いました」
地下アイドルとしての活動だけだと、どうしてもファンからの収入に頼ることになる。つまり、ファンに頭が上がらなくなる。
「かまってくれないなら、ファンやめちゃおうかな~?」
なんて、甘えてくるファンに対して媚びずにいるためには、地下アイドル以外の収入が必須だった。
大学に通いながらの、アイドル活動、執筆業、とそれだけでも忙しかったが、まだアルバイトも続けていた。具体的には、カラオケ、デパート、ビストロホール、などで働いた。
「正直、意地で働いていました。最後のほうは、アルバイトの収入は月3万円くらいになっちゃってたんですが、それでも続けてました。何というか、学生としての金銭感覚を忘れたくなかったんです」
アイドルのイベントではチェキと呼ばれる物販がある。お客さんと一緒にインスタントカメラで写真を撮っただけで500円の収入になる。うまくいけば、短時間で多額の現金が懐に入る。そうして簡単におカネが稼げるので、金銭感覚を崩してしまうアイドルもいるという。
「チェキやってたら、一生お小遣い稼げるじゃん」
と言って、高校もアルバイトも辞めた子がいた。はたから見ていて、その楽観さは姫乃さんにとって恐怖以外の何物でもなかった。自分はそうならないために、あくせく働いていたのだが、そのためにミスを犯してしまった。
「就職活動をするタイミングを逃しちゃったんです。就職課に行ったら
『え? 今から就活するんですか?』
って驚かれました。結局、エントリーシートが何なのかさえわからないまま、私の就活は終わりました」
「会社では働けないタイプ」と気づく
姫乃さんは、実はごく最近まで
「私は、将来はOLになるんだろうな」
と思っていたという。
卒業後も、目の前の仕事が途切れて、一区切りしたら就職しよう、と思っていたのだが、仕事は途切れなかった。そのままフリーランスで、地下アイドル、ライターを続けるうち、最近になって
「私は会社では働けないタイプだな」
と気がついたという。
「今までも『姫乃さんはOL無理でしょ?』とか言われてたんですが、冗談だと思ってたんです。でも最近になって、朝起きるの苦手だったり、人間関係を長く続けるのが苦手だったり。ああ、私は会社勤めは無理な人間なんだな、と思うようになりました」
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