時代的に、SNSが普及して、芸能事務所に入らなくても、宣伝活動ができるようになってきていた。そのため、正体不明のアイドルたちが有象無象に現れ、彼女たちは揶揄の意味をこめて、地下アイドルと名付けられた。姫乃さんも、ご多分に漏れず地下アイドルと呼ばれた。
地下アイドルという言葉は蔑称だったため、地下アイドルと呼ばれ、憤っているアイドルたちもたくさんいた。しかし、姫乃さんは、地下アイドルと呼ばれることにまったく抵抗がなかったという。
「私の自尊心は、中学時代に完全に失われているんですよね。
だから、アイドルとして舞台に上がってものぼせられないんです。そもそもアイドルになりたかったわけじゃないですし、“地下アイドル”くらいでちょうどいいなって思ってました」
芸能事務所に所属しようとは思わなかった
姫乃さんは地下アイドルライフを堪能していたが、地下アイドルの存在をこころよく思わない人もいた。
とある芸能事務所の社長には、
「自分は地下アイドルだって名乗るなんて、自分のことを乞食ですって言ってるのと同じだ!!」
と頭ごなしに罵倒された。
多くのアイドルを抱える芸能事務所の社長からは、フリーランスのアイドルなんて、乞食のように見えたのかもしれない。ただ、そうなじられても
「なんか、とても怒っているな……」
と思うだけで、姫乃さん自身は芸能事務所に所属しようとは思わなかった。芸能事務所に入ってメリットがある人は2パターンに分けられるという。
「私はアイドル活動はしたいけど、事務作業はしたくない。マージンを取られてもいいから、めんどくさい事は全部事務所にやってもらいたい」
という人と
「私は将来絶対に売れるから、事務所は私に高い予算をかけて、ガッツリ投資してください」
という人である。
「私はどちらでもないんですよね。事務作業は苦ではないので、それで事務所にマージン抜かれるのは困るし、予算をかけて売れるタイプでもないので。フリーランスでいいかな~と思いました」
アイドルとして活動しながらも、自ら営業をかけたことはなく、オファーが来たら登壇するという流動的なスタイルだったが、仕事は途切れなかった。フリーランスだから、打ち合わせも自分でしなければならないが、いろいろな人に会えて、逆に楽しかった。
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