日本が誇るクラシックの祭典「PMF」の舞台裏 今年の札幌は文字どおりアツかった!

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28回を数えるPMFで学んだアカデミー生(アカデミー修了生)の数は延べ3300人。その多くが、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団やフィラデルフィア管弦楽団など、世界各国に存在する200以上のオーケストラで活躍中だ。

その実績が評価されて、現在ではアメリカの「タングルウッド音楽祭」、ドイツの「シュレースヴィヒ=ホルスタイン音楽祭」とともに、“世界3大教育音楽祭”と称される存在になっている。

PMFの楽しみとは?

このPMFのすばらしさは、もちろん音楽を学ぶ学生たちだけのものではない。われわれ音楽ファンにとってもかけがえのない“ひと夏の体験”を提供してくれるのだからすばらしい。

PMFオーケストラの演奏会は要注目。7月31日にはミューザ川崎、8月1日には東京文化会館で行われる

その筆頭は、「アカデミー生」によって構成される一期一会のアンサンブル「PMFオーケストラ」だ。毎年メンバーが入れ替わるだけに、年によってオーケストラの仕上がり具合や質の違いが興味深い。コンサートの回数を重ねるごとにアンサンブルの質が向上するのはもちろん、指揮者によって出てくる音がまったく違う点にも注目だ。

指揮者によって音が違うことなどありうるのか?という疑問はもっともだが、これが確かに違うのがクラシックの面白さだ。仕事上でも上司によって緊張感が違えば仕事の成果も変わるのと同じで、オーケストラからいかにすばらしい響きを引き引っ張り出せるのかが指揮者の腕の見せどころだ。その意味では、1カ月にわたる音楽祭の始めと終わりの変化を聴き比べ体験するのも興味深い。

教授陣によるスーパーアンサンブルやガラコンサートなども音楽祭を楽しむうえで重要なポイントだが、ここ札幌ならではのコンサートが楽しめる「ピクニック・コンサート」はさらにお薦め。市の中心から少し外れた郊外に存在する「札幌芸術の森・野外ステージ」で展開されるステージは、まさに野外音楽堂ならではの開放感が満載。ステージ前に広がる芝生に腰を下ろしてビールやワインを飲みながら聴くクラシックには、一味違った楽しさがある。

さらには、札幌市内のさまざまなスペースで開催される無料コンサートも見逃せない。大通公園の野外ステージはもちろん、札幌市役所のロビーや札幌駅前歩行空間を利用したコンサートなどなど、札幌市が「冬は雪まつりで、夏はPMF」とPRする意気込みが伝わってくるようだ。

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