権威の引用が大好きな「頭のいい人たち」
――本来、経済学というのは日本人にとって異質なものなのに、アベノミクスのように「経済学的に正しい」とされる政策を主張する人がいるのはなぜなのでしょうか?
以前、東京大学のある先生と対談した際に、先ほどの「需給曲線がすんなり理解できない」という話をぶつけてみたことがあるんですよ。
すると、その先生は「東大生はすぐに理解できますよ」と答えていました。といっても、それは東大生を褒めているわけではなくて、要するに「間違ったことを教えても、教科書にあることをそのまますんなりとのみ込めてしまうような部分が東大生にはある」という話です。
今の状況もそれに近いのではないかと思いますね。アベノミクスがやっているリフレ政策というのは、世界的には主流派の経済学です。代表的なところでは、FRB議長のベン・バーナンキやノーベル賞経済学者のポール・クルーグマンが「経済学の権威」として君臨しているわけですね。
東大生のように「とても頭がいい人」が、そういう経済学者に師事したり、またはそういう見解を、まず、最初に学んでしまったりすると、もうそれが正しいものとして頭に定着してしまう。
――説明された理論を吸収する力はあるけれども、その理論を批判的に検証することが苦手な人たちが多いということですね。
必ずしも東大生のすべてがそうだというわけではないでしょうけれど、実際、アベノミクスに賛同するリフレ派識者には東大出身者が多くいます。
しかも彼らが自説を展開したり、反論したりする際には、「主流派経済学の見解に従えば……」とか「バーナンキによれば……が当たり前」とか「ノーベル賞経済学者クルーグマンも正しいと言っている」といった独特の話法を多用します。
本当は間違っていたとしても、とにかくそういうものとして頭にインプットしてしまっているので、反論されたときには権威にすがるしかないのでしょうね。そういう人たちが、「国民に働きかけて、『期待』を生み出す」と息巻いているわけですが、これはもはや科学というより宗教の考え方ですよね。