ユニクロ「エアリズム」が猛暑でも快適な理由 大ヒット機能性肌着に生きる東レの技術力
そこで東レは、繊維構造に工夫を施すことによって、化繊生地に吸水性を持たせ、同時に速乾性もより高めた。田畑氏によると、活用したのは理科の時間に習う「毛細管現象」の原理。液体が重力とは関係なしに細い管の中やすき間を上昇していく現象だ。
実は、男性用のエアリズムは、100本近いポリエステル原糸を1本に束ねた糸で生地を編んでいる。右下の断面拡大写真を見てわかるように、束ねられた各原糸の間には微細なすき間がある。
ここがポイントで、かいた汗は毛細管現象によってこのすき間を通り、生地の肌面から表側へと移動しながら拡散して蒸発する。このため、エアリズムは化繊なのに汗をよく吸い、しかも通常の化繊着より乾きも早いのだ。
独自の極細糸で薄さや軽さを実現
毛細管現象を利用した吸汗速乾着はスポーツウエアなどで以前からあり、原理自体は新しくない。技術的に見てエアリズムがすごいのは、最先端の超極細糸でそれを実現している点だ。
先述した原糸の太さは8マイクロメートル(0.008ミリメートル)、髪の毛の約12分の1。当然軽く、たとえば長さ1万メートル分でも重量はわずか70グラム弱に過ぎない。東レが専用に開発したマイクロ繊維で、5年前に今のレベルの細さに到達した。
いくら吸汗速乾性が高くとも、着心地が悪いと消費者から支持されない。スポーツシャツならまだしも、肌着であればなおさらだ。「エアリズムでは、まるで着ていないかのような着心地が求められた。薄さと軽さ、しなやかさをすべて実現するには、極限まで糸を細くする必要があった」(田畑氏)。
男性用は発色の良い改質ポリエステル(カチオン可染型)で原糸を造っており、このタイプのポリエステルは糸を細くしようとすると切れやすい。それをここまで極細化できたのは、東レの高度な技術があってこそだ。同社の中でもこの超極細原糸を安定した品質で生産できる工場は限られ、石川工場(能美市)の特殊な設備を用いて製造している。
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