三菱ケミカル、ついに動く「最強工場」の実力 汎用品のアクリル樹脂原料で海外勢を圧倒
灼熱の中東・サウジアラビアの東部で、日本の総合化学メーカー最大手、三菱ケミカルの巨大な新工場が立ち上がる。生産するのはアクリル樹脂原料となる汎用石化品のMMA(メタクリル酸メチル)。約1000億円を投じた設備はすでに完成し、8月から商業生産を開始する。
新工場はサウジの国営石化企業SABICと折半出資する共同プロジェクトで、世界最大規模の生産能力(年産25万トン)を誇る。MMAを重合・加熱して作るアクリル樹脂の生産設備も備え、MMAと成形材料用の同樹脂を最大需要地のアジア、地理的に近い欧州などに供給する。
工業製品から生活用品まで多様な用途
アクリル樹脂は透明で耐候性に優れたプラスチック。加工も容易なため、店舗の看板標識、自動車のランプカバー、光学レンズ、液晶導光板、照明器具など、工業製品から生活用品までさまざまな用途に使われている。
今年4月、三菱ケミカルホールディングス傘下の化学系3社(三菱化学、三菱レイヨン、三菱樹脂)が合併して発足した三菱ケミカルは、そのアクリル樹脂と原料のMMAの両方で世界最大手。旧三菱レイヨンが手掛けてきた事業で、特にMMAでは4割近い圧倒的なシェアを握る。
すでに世界8地域にMMA生産拠点を有する同社だが、中東初進出となる今回の新工場は特別な意味を持つ。独自製法と原料立地の最適な組み合わせにより、圧倒的なコスト競争力を有する“最強のMMA工場”になると期待されているからだ。
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