成田空港「LCC活況」を手放しで喜べないワケ 就航5年で定着進んだが、課題も山積

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混雑する第3ターミナル(写真:筆者撮影)

またスポット(ゲート)も足りなくなり、前の便が定刻に出発しないと、到着便が着陸してもゲートに入れないことも頻繁に発生している。「混雑については1社だけでは解決できないことも多く、私たちの運航自体も厳しくなり、お客様にも迷惑をかけている。空港会社を含めての解決策を考えていかなければならない」とジェットスター・ジャパンの片岡会長は話す。第3ターミナルオープン時から利用者が不満点として挙げていた、駐車場や一般車の車寄せがない点なども解消していない。

交通アクセス、宿泊施設にも課題が

夜23時以降の成田空港から都心への交通アクセスにも課題が残る。成田空港は騒音対策の観点から朝6時~夜23時までしか滑走路が使えず、最後の到着便も現状では22時20分着のスケジュールになっているが、天候要因などで遅延の場合は条件付きで24時まで離着陸が可能で、23時台に到着する便が発生することもある。

そのときに東京方面へ行ける最終便の京成バス「東京シャトル」東京駅行きは、23時10分に第3ターミナルを発車する。このバスに乗れないと東京方面へ公共交通機関で戻ることができない。夕方時点で遅延が見込まれる場合には臨時バスを出すこともあるが、急な遅れの場合には臨時便を出せないこともあるようだ。23時台に成田空港へ到着した後、都心方面へ戻れずに空港内で翌朝の始発列車を待つというケースもときどき発生しているという話も関係者から聞こえてくる。

宿泊施設の整備も課題といえる。現在、ターミナルに直結している宿泊施設はカプセルホテル「ナインアワーズ」しかない。羽田空港や関西国際空港などのように成田空港内のホテルが充実していれば、もっと早朝便の集客が可能になるが、物理的に難しい。

成田でLCCが就航した当初は、朝6時台の便が多く運航されていたが、交通アクセスやホテルの問題などもあり、バニラエアは朝6時台の便の運航を取りやめているほか、ジェットスター・ジャパンも週末以外は朝6時台の出発便がない。LCCの強みである1機あたり稼働時間を長くさせる為に、ジェットスター・ジャパンではマニラ・台北・上海、バニラエアでは香港・台北線を夜に成田を出発させて、朝成田に戻ってくる機体運用をするなどの工夫をしている。

成田空港が使いにくいという理由で、LCCを利用してみたくても躊躇している人がいるのも事実である。LCC各社、成田空港会社も含めて利用者が不満に思っていることを1つずつ解決していくことが求められるだろう。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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