ところが、就航初日から機材繰りや出発手続きに時間を要し、大幅な遅延や欠航が相次いだ。LCCは他社便への振替もコストを抑えるために原則行わないため、予約した人がその日のうちに目的地に移動できなかったというニュースが駆け巡った。結果的に「LCC=遅延する乗り物」というイメージが付いた。
それだけでなく、預ける手荷物や座席指定が有料だったり、チェックインの締め切り時間が大手航空会社よりも早かったりなど、LCC特有のルールに利用者自身も戸惑った。飛行機に対して全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)などの大手航空会社のサービスに慣れていて、それを基準としていたことも少なからず影響しただろう。ジェットスター・ジャパンや旧エアアジア・ジャパンの搭乗率が低迷する時期が続いた。
その後、旧エアアジア・ジャパンは撤退。ANAホールディングスの全額出資による出直しで、2013年12月に就航したバニラエアは、就航から5カ月後の2014年4月に過去最低の月間平均搭乗率51.8%を記録した。
当時の状況をバニラエアの石井知祥会長(当時は社長)に聞くと、「当初、LCCは安かろう、悪かろうというイメージを持たれていた。ターゲットにしていた大学生自体が乗らなかった。大学生へのアンケートには『親がLCCには乗るなっていうから乗らない』というコメントもあった」と話す。
LCC各社は悪いイメージを払拭するべく努力を続けた。Webチェックインや自動チェックイン機を導入。運賃体系をわかりやすくし、新規就航都市を広げ、各路線の便数を増やした。これでLCCの認知度が上がり、リピーターが増えていった。訪日外国人の増加も追い風となった。
累計搭乗者数が2000万人を突破
ジェットスター・ジャパンは今年7月8日に累計搭乗者数2000万人を突破した。過去の推移を見ると、同500万人を突破するまでに2年を要したが、2014年夏以降は年間500万人程度のペースで利用者が増えている。ジェットスター・ジャパンの片岡優会長は「5年前に比べるとお客様がLCCをどのように考えているのかが大きく変わった。今ではLCCが身近な乗り物として捉えていただけるようになった」と話す。ジェットスター・ジャパンは就航4年目で初めて黒字化した。
しかしながら、成田空港におけるLCCのさらなる発展には課題も山積だ。第3ターミナルはオープンから2年ですでに人であふれている。出発が重なる時間になるとチェックインカウンターには長蛇の列ができ、チェックインまでにかなりの時間を要することも珍しくない。LCCの航空会社関係者に聞くと、「チェックインカウンターが手狭で現状ではこれ以上広げることができない」とお手上げ状態になっている。
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