日本でたった6台、特注ポルシェ911の実力 3334万円、607馬力のマシンにのってみた

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いっぽう、アクセルペダルの踏み込み量に対して加速はじつに繊細だ。極端なことをいうとミリメートル単位で回転数が変わるという感覚すらある。コーナリング中の車体のロールは抑えられている。といっても時速90km程度でワインディングロードを走っただけでは大きなドラマはない。

繰り返しのようになるが、クルマの挙動変化はごく控えめ。切り出しからクルマの反応の鋭さは超一級のスポーツカーにふさわしいダイレクトさだ。ステアリングホイールを切り込んでいくときに車体が向きを変える反応速度の速さといい、ハンドリングの確かさといい、スタンダードの911カレラもいいが、その上の上をいく感じである。

この反応の、すごぶるつきのよさこそ、911ターボSの身上なのだ。

ポルシェのターボモデルであるということ

ポルシェ 911ターボS エクスクルーシブシリーズは、一見派手な(だけの)911シリーズのように思われるかもしれない。もちろん触れてきたように内外装ともにポルシェ・エクスクルーシブ・マヌファクトゥールの手が入った特別なものなので、その第一印象は間違っていない。

しかし第二印象、第三印象という言葉がもしあるなら、よく出来たスポーツカーだ、と乗るたびに印象が深まっていくモデルでもある。このクルマの、洗練されつつもその気になったらすさまじい加速力をみせるターボパワーを一度でも体感したら、その興奮を隠さずにはいられないだろう。

このフラット・シックス・ターボは、「可変タービンジオメトリーを組み込んだターボチャージャーを使用するゆいいつのガソリンエンジン」である、とポルシェは胸を張る。高価で複雑な制御を必要とする技術だが、その恩恵は幅広い回転域でターボチャージャーの効果を得られることだ。そういえば本社そばのポルシェ ミュージアムにいくと、ターボチャージャーで強力なライバルに対抗しようとして開発された917/10K(72年)や935(76年)関連の展示が多かった。

ターボ・テクノロジー面での長い歴史と経験が、このスペシャルモデルにもちゃんと息づいているのだろうし、ポルシェを買うひとはそのことを理解しているのにちがいない。

職人が手縫いしたシートやステアリングホイールのステッチを触ると、そのスペシャルさに感心する。日本では右ハンドル4台、左ハンドル2台のみ販売されることが決定している。価格は3334万円だ。

(文・小川フミオ)

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