アップル「最新スピーカー」の秘めた実力

ホームポッドはアマゾンエコー超えるか

それに、エコーはアマゾンのオンラインストアとがっちり連携しており、多くのユーザーに重宝がられているが、明らかにホームポッドにはこうした機能はない。台所洗剤がないならアレクサに発注を頼むことができるが、相手がSiriでは同じことはできない。

こうしてエコーにはあってホームポッドにはないと見られる優れた特徴は数々あるが、その多くについてはアップデートを通して今後、改善が進むと思われる。まず当初、最も問題となるのは基本性能に関する信頼性だろう。

以前からSiriを使っている人にはわかることだが、実はエコーの最大の長所はその信頼性なのだ。離れたところからでも、うるさい部屋の中でも、大抵の場合、ユーザーの話したことをアレクサは理解してくれる。

いろいろな指示に応えられるアレクサは、コンピュータの完全に自然なインターフェースのようにも思えてくる。反応も速いし、コンピュータというよりは頼りになる家族の一員のようにも感じられる。

技術でトップに立つ必要はやはりなし

はたしてホームポッドのSiriに同じことができるだろうか。私には今のところはっきりと答えることはできない。私はWWDCの基調演説の後でホームポッドの音を聞く機会はあったが、音声認識を試すことはできなかった。アップルの言うとおり、音はエコーやソナスのWi-Fiスピーカー「プレー3」よりもずっと深く豊かだった。どちらかというとハイエンドな家庭用オーディオシステムに近い感じだ。

だがこの手の機器の真価は、実際に使われる状況で、日々の生活におけるさまざまな指示を処理しつつ、どれほど機能するかにかかっている。そして現時点では、その実力のほどはまったくわからない。

だが今回、アップルが公開した多くの特徴から、私はホームポッドの先行きを(保留付きでだが)楽観視している。その多くは、グーグルなどのライバルが長年かけて完成させてきた機能のアップル版だ。

たとえばSiriは通訳をしてくれるようになるだろう。本物のアシスタントのように、先回りして考えるようにもなってきた。たとえば先の予定について話していると判断したら、カレンダーに予定を追加してくれるというように。

何よりいいのは、Siriがついに、すべての端末を通じて共通の「人格」に統合された点だ。これまではiPadのSiriとMacのSiriは別人だった。片方は持ち主がアイスランドを旅していることを知っているのに、もう片方は知る由もないといった具合だ。だが他社の音声認識アシスタントと同様に、Siriは持ち主のことをよく知るようになり、どの端末を使っていても何に関心を持つかを予測できるようになった。

ほかにもある。アップルはデバイス上で機械学習を行うアプリを外部の開発者が作り出せるようにしている。また、画像認識技術にも力を入れはじめた。おかげで開発者は、実世界を写した映像の上に仮想の物体を重ねて表示するARを実装したアプリを作れるようになった。

ハイテク業界の動きに詳しい人なら、機械学習にしても画像認識にしてもライバル企業が多額の投資をしている分野であることを知っているはずだ。こうした分野でアップルは出遅れており、当面はAIでグーグルに太刀打ちできるとは思えない。

だが必ずしも勝つ必要はない。アップルに必要なのは競争力を維持することだけなのだ。もちろん、製品の魅力を維持するためにはAIに支えられた未来への投資はある程度必要だ。そして今まさに、アップルがそうしているのは間違いない。

(執筆:Farhad Manjooコラムニスト、翻訳:村井裕美)
(c) 2017 New York Times News Service

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