グーグルが認めた「花まる学習会」アプリの力 子ども向け教育アプリで世界トップ5に選出

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「一度始めたらずっと楽しめる、自己肯定感も育めるアプリを作りたかった」。川島氏は、国内外の児童養護施設で教育に携わった経験もある。そこで感じたのが、教育格差は「意欲の格差」から生まれているということだった。

成功体験を積み上げていけば、意欲も上がっていく――。シンクシンクでは、アプリで遊ぶ子どもたち1人1人のレベルに合った問題を出す。メダルやポイント、ランキングといった仕組みも取り入れることで、子どもたちが「できた!」という感覚を持てるように開発したという。

3ゲーム終了後、「きょうもよくがんばったね!」というメッセージが流れる(写真:花まるラボ)

一方で、こうしたスマホアプリに対しては保護者の間で「ゲームのようにやりすぎてしまうことはないか」という懸念がある。

そこでシンクシンクは1ユーザーのプレイ時間を1日3問、合計10分に制限している。「1日の1%にも満たない時間。短時間で子どもたちも没頭できるし、継続性が高まる」(川島氏)。

鍛えるべき思考力とは?

花まるラボでは鍛えるべき思考力として、5つの要素を上げている。「空間認識」、「平面図形」、「試行錯誤」、「論理」、「数的処理」だ。シンクシンクは、この中でも10歳までに大きく伸ばせるとしている空間認識、平面図形、試行錯誤の3分野を鍛える問題が主だ。

問題の制作にあたっては、まず花まるラボの社員がコンセプトを決め、東大生を中心とする40人のアルバイト学生を中心に、個々の問題作成やデザイン、プログラミングなどを行う。

「ラッキーバルーン」のゲーム
「とおる?」のゲーム(両写真:花まるラボ)

最も人気があるのは「ラッキーバルーン」というゲーム。矢の方向を想像し、いくつか置かれている風船の中で割れないと思うものを選択する。適切な補助線を引く訓練になるという。2番人気は「とおる?」。提示された立体図形が、壁に空けられた穴に通るかどうかを○か×で答える。

3番人気は「ひとふででんきゅう」だ。電池からすべての電球を一筆書きでつなげられるように指でなぞるというもの。電球が多くなればなるほど、一筆書きの道筋を考えるのに頭を使う。

花まるラボの川島慶代表。小さなオフィスで大きな夢を描く(記者撮影)

現在は日本国内が中心だが、海外展開も進めている。タイ・バンコクではアプリを含めた教材を使った教室のフランチャイズを始めたほか、カンボジアでは社員の採用を行い、政府への働きかけなどによってアプリの活用を大きく広めたい考えだ。

グーグルプレイアワードでのノミネートが発表されてからは、就職の応募が増えたほか、企業からの提携の打診なども受けるようになったという。

「2020年には1000万ダウンロードを目指す。教育アプリでのフェイスブックやユーチューブのような存在になりたい」と壮大な野望を掲げる川島氏。盤石な親会社の後ろ盾を背に、猪突猛進を続ける。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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