「他人の人生を覗く」に魅せられた男の仕事観 ゲーム作りとの両立で人生を過ごしていく

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イベントなどで収益が上がることもあるが、基本的は赤字だ。月5万円は手帳類に使っていいと自分ルールを科しているが、最近は1冊1000円では上限を超えるほどの買い取り希望が届くようになっており、そのために多少能動的な舵取りが必要になってきてはいる。買い取り額を1冊100~500円程度に下げたり、寄贈を求めたり。やはり収益を上げる方向には意識がいかない。

手帳類図書室所蔵の手帳(手帳は志良堂さんが自ら書いたもの)

「10年後の目標にしていた1000冊にまもなく到達しますし、そろそろ収集するより体験してもらうことに重きを置いて活動しようかなというのはありますね」

日々の収入はプログラミング業で稼ぎ、手帳類プロジェクトは“お小遣い”のなかでやり繰りしている。そう考えると後者は趣味の範疇に入りそうだ。ワーク・ライフ・バランスでいえば、ライフの側。しかし、志良堂さんは首を横に振る。

「婚約者には趣味だよねと言われますけど、僕の中ではワークですね。手帳類が動いていると、いろんな人からアプローチをかけてもらえる。そうやってつながりが生まれていることを考えると、おカネは赤字でも黒字だと思うんですよね。月5万円なんて予算でこれだけ多くの人とつながれる取り組みもないんじゃないかなと」

志良堂さんはおカネを時間に置き換えてとらえる習慣がある。月10万円生活なら、貯金60万円=6カ月分の猶予という感覚だ。そして、互いの能力を認めたうえでの人とのつながりが新たな仕事を円滑に進めたり規模を大きくしたり、予想だにしない展開を生んだりすることにも自覚的だ。そういう将来に資する可能性を総合的にとらえてワークと見なしている。

だからこそ、将来手帳類プロジェクトが本業化する可能性も否定しない。

「自分が面白がれることが大前提ですし、いまはどんな展開をすればマネタイズできるか具体案は浮かんでいません。ただ、目録だけでも売ってほしい声もいただきますし、少人数で同じ手帳を読み合ったり解釈したりする会を開くというアイデアもあるので。転がり続けるかぎりは可能性を探っていきたいですね」

時間配分をどうするか

一方で、ゲーム作りに注力したい思いもある。

ゲーム作りのリソースは会社のプロジェクトと共有している格好だ。会社のプロジェクトを完了したら一定期間のゆとりをもらい、その間に自作のゲーム作りに労力を割くという、スイッチ方式を長年続けている。そちらの折り合いは問題なくできている状況だが、手帳類の動静によって割けるリソースの総量が変動するところもある。

「なので、つねにせめぎ合っていますね。ライフの部分も含めて、時間配分をどうするかという。局面局面で手を抜かずに自分の心の声を拾っていくことが大事だと思っています」

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