「他人の人生を覗く」に魅せられた男の仕事観 ゲーム作りとの両立で人生を過ごしていく

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「あなたの使用済み手帳を1冊1000円から買い取りします」

以前に増して精力的に手帳収集するようになり、友人の伝もあって、集めた手帳を展示しながら買い取りもする手帳類イベントを不定期で開催するようになる。どうにか20冊を集め、東京・荻窪の友人宅であるアパートの一室で開いた最初の展示会には、2週間で50人の来場者を集めた。複数冊の手帳や日記を売ってくれる人もいて、確かな手応えを感じたという。

取材先で見せてもらった手帳類

とはいえ、個人情報が詰まった手帳を他人に売り渡す、まして一般公開を許すというのはあまり普通の感覚とはいえない。

「なので最初期は友人知人にどうにかお願いして集めていました。同時にネットでも募集をかけていて、ごく少数の勇気のある人が送ってくれたりしました。そうして展示会を開いたら『面白い』と言ってもらえて、そこから徐々に徐々に集まるようになっていったと思います」

参加者以外からのバッシングはどうか。

「批判を受ける不安はかなりありました。許可の取り方や個人情報を隠す指針などはまだ固まっていなかったので、ビクビクしながら手探りで準備していましたね。けれど、ふたを開けてみたら意外とたたかれなくてびっくりしたのを覚えています」

いまも安心はしていない。まだ面白がってくれる層にしか届いていないだけで、拡大していくうちに批判的な目にさらされる。そのときを見据えて理論とガイドラインをアップデートし続けているという。

手帳類プロジェクトは「お小遣い」のなかでやりくり

取材時に筆者が寄贈した手帳

手帳類プロジェクトはほとんど自走式で拡大している。最初期に手帳展を開いた頃からほかのイベントやメディアからのリアクションがあり、それに応えてイベントに参加したり記事や番組に協力したりするとまた広がりができ……という好循環が継続中だ。志良堂さん自身はあえてレールを敷かず、転がるに任せてきた。

2016年秋には群馬の借家を引き払い、都内マンションで婚約者と同居を始めている。しかし、冒頭で書いたとおり、プロジェクトは収入にはつながっていない。

「ベンチャー界隈にいると、いろんな人から『マネタイズしないの?』と話を持ちかけられたりするんですけど、おカネが入っても自分が楽しめない企画なら苦しいだけですから。プログラミングの仕事も好きで、そっちのほうで稼いでいるからいいというのもあります。あくまで手帳類は自分が面白がれることを優先しています」

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