都議選の結果を「数字」で分析してわかること 人々の政治への不信が高まっている

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7月5日から12日までの予定でG20首脳会議などでヨーロッパに外遊していた安倍晋三首相が1日早く帰国した理由も、九州北部の豪雨被害ばかりではなかったはずだ。

中央政界へのインパクトは甚大であり、そういう意味では今回の都議選は単なる地方選ではなく、次期衆議院選に小さくない影響を与えるものと思われる。それはいったいどのようなものなのか。あらためて都議選の投票結果を分析することで、読み解いていきたい。

公明党と共産党が健闘

まずは得票数でトップだったのは188万4029票を獲得した都民ファーストの会で、全体の33.68%を占める。次が126万0101票を獲得した自民党になるが、都民ファーストの会の3分の2にすぎない。また自民党は59議席(落選者なし)を獲得した前回と比べて、37万3202票も減らしている。

自民党に次いで獲得票数を減らしたのは民進党だ。前回の69万0622票から38万5752票と30万4870票も減らし、5議席しか獲得できなかった。劣勢とされた前回の都議選でも15議席数を獲得していたから、その3分の1まで減少したことになる。これは都議会で野党第1党から一気に転落した以上の意味を持つ。これから起こる国政での予知夢となるのかもしれない。

その一方で、健闘したのは公明党と共産党だろう。公明党は23議席を維持し、共産党は2議席増の19議席(推薦1議席)を獲得した。

しかしながら獲得票数では、77万3722票の共産党は73万4697票の公明党を上回る。前回の都議選と比較しても、共産党は15万7001票の増加で、公明党の9万5537票増よりも多く、獲得順位も逆転している。

もっとも公明党は擁立した23候補に絞った戦いを展開して全勝したため死票はないが、共産党は37名を擁立して18名が落選。その獲得票数の中には死票が含まれている。だが次期衆院選を考えれば、その数字の意味は小さくない。

というのも、2016年の参議院選挙で都内で投票された政党別の比例票は、共産党は88万2538票で公明党は71万0528票。17万2010票も共産党が上回っている。

ここ数年は共産党の票が伸びており、2013年の参議院選では共産党は77万2500票で公明党は68万8534票。2014年の衆議院選では、共産党は88万5927票に対して公明党は70万0127票(いずれも比例票)と、いずれも共産党の方が獲得票数が多くなっている。

これは公明党にとって大きな脅威だろう。両党はその政治傾向は異なるが、支持基盤の社会的階層が重なると言われてきたからだ。

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