デザイン思考の先を行く「意味の革新」の本質 1人の熟考がブレインストーミングを上回る
これと似たプロセスをたどったのが、マイクロソフトの家庭用ゲーム機「Xbox」です。Windowsというビジネスの汎用OSでは、ゲームの世界でソニーや任天堂と勝負しきれないと不安感を持った同社の社員4人が、まったくそれぞれに個人で歩むべき方向を考え、そして組織の動きとは関係なく非公式に集まり始めました。1999年のことです。
ここで議論した方向が、ゲーム専用機の開発でした。最初、幹部のスティーブ・バルマーは、Windowsという「カネのなる木」から離れるアイデアを一笑に付したのですが、最終的にXboxはわずか2年あまり後の2001年に市場に出て、全世界で2400万台を売り上げることになります。
真のイノベーションは1人で考えてこそ実現する
アップルのスティーブ・ジョブズに代表されるように、これまで「内から外」へのイノベーションは、カリスマ性に依存するといわれることが多くありました。ワンマン経営者や家族経営の企業の「内から外」も同じで、つねに決定権のある人間が独断的に取る方法であるとネガティブにとらえられてきたために、その反動として、ユーザーなど「外の意見」を最初に聞くアプローチが民主的であると過剰評価されてきたきらいもあります。
しかしながら、ユーザーに接近しすぎると、見えるものも見えなくなります。「なぜ(Why?)」が問えなくなり、「どうやって(How?)」ばかりに気が回ってしまう。これが、多くの人が「意味のイノベーション」の最初の起点になかなか立てない大きな理由なのです。
1人でじっくりと考えてこそ、人々の生活に深く切り込むイノベーションは起こせるのです。複数の参加者から意見やアイデアを募るブレインストーミングに汗を流し、肩をたたき合っているだけでは、結局は前に進めません。「意味のイノベーション」の本当の相手は、「ユーザー」ではなく、人生の意味をつねに探し求める「人間」なのですから。
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