デザイン思考の先を行く「意味の革新」の本質 1人の熟考がブレインストーミングを上回る

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意味のイノベーションは、これとは正反対です。「意味のイノベーション」が有効に働くエリアは、イノベーションの種類でいえば「新しい意味の生成」となります。また、アプローチについては、「1人の人間の直観や過去の蓄積から生まれる仮説」を熟考するのが起点となり、問いは「Why(なぜ?)」です。それを信頼の置ける1人のパートナー(ボクシングの「スパーリングパートナー」にたとえます)と一緒に批判にさらすのです。

このプロセスを経て強いビジョンになったところで、次に数人の「ラディカルサークル」と呼ばれるメンバー招待制のグループで、ビジョンをさらに強靭なものに育てます。第3段階で初めて組織外のエキスパートのビジョンに対する解釈を得て、最後にユーザーに出会うのです。デザイン思考が強調する「判断の先延ばし」はせず、このプロセスでは議論のそれぞれのタイミングで判断を下していきます。

つまり、意味のイノベーションでは、(1)内から外(問いはWhy) (2)批判の技法をフル活用、というのが特徴です。

絵画からゲーム機開発まで通じる方法論

デザイン思考に関するノウハウは、書籍やインターネット上でもたくさん見つかるため、ここではベルガンティの説く「意味のイノベーション」において、上記のプロセスの実例としてどんなものがあるかを紹介しましょう。

記事の冒頭で、「印象派」は19世紀の大イノベーションだったという話をしました。ルノワールの絵を見たシスレーが「君は何とクレージーなんだ!」と批判しながらも同調していったというのは、まさに先ほど述べた「スパーリングパートナー」にあたります。この2人の間で強くなったビジョンを、次にクロード・モネとフレデリック・バジールに伝え、批判を受けながら、確固としたものにしていきました。

その次の「ラディカルサークル」は、他の画家(カミーユ・ピサロ、エドゥアール・マネ、エドガー・ドガ、ポール・セザンヌ)や小説家、詩人、彫刻家、音楽家などです。さまざまな分野の思想家を含むサークルをつくり、作家のエミール・ゾラもその1人でした。彼らは毎週木曜日の夜、パリのカフェ「ゲルボワ」で会合を開き、激論を交わしました。その結果、印象派は「絵画の意味」を変えるに至ったのです。

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