EU離脱というポピュリズムの潮目は変わった

右にも左にも行かない、欧州エリートの正体

フランスでは、泡沫候補にすぎなかったマクロンに乗ろうとする勢力が、既成政党の右からも左からも相次いだ。そして彼のつくった政党「共和国前進!」に鞍替えし、EU を守る市民団体の活動家がそれに乗った。その結果がこの議会選挙での大勝利であったといえる。

しかし、この選挙には、大きな落とし穴がある。それは棄権の多さだ。もっとも大統領選挙と違って、議会選挙に対する人々の関心は薄い。棄権投票の割合が6割近くになったからといって、とりわけそれが問題というわけではない。むしろ明確に選挙を拒否して、棄権した者が多かったという点が問題である。おおかた、雪崩を打って勝ち馬に乗る人々に、呆れたからであろう。

貧しさへの嫌悪と白人であるという誇り

今年2月、フランスの書店で、マクロンの書物『革命』の脇に並んでいたのがジャン=クロード・ミシェアの『わが敵、資本』(2017年)であった。そこには面白い記述がある。19 世紀の文豪、フロベールに関する逸話である。

フロベールは友人にこう書く。「人民は愚かだ!くびきや棍棒がなければ生きられない、永遠の奴隷種族だ。われわれは、彼らのために戦っているのではなく、高邁なわれわれの理想のために戦っているのである」。フロベールも、貧しい民衆への同情はもっていた。しかし、心底、彼らを好きになれなかったのだ。

社会党や共和党の本流にいて、おおかた移民問題や貧困問題に関心をもち、人権を擁護し、ヨーロッパの安寧を望む中流階級の気持ちは、フロベールの気持ちと同じではないだろうか。彼らは、民衆の破壊的行為や、ブルジョワに対する憎悪など、それらに対して辟易し、彼らに無知の烙印を押して、軽蔑するのだ。

一方、貧困に打ちひしがれた、元中産階級である白人のフランス人も、ある意味で屈折した感情をもつ。パトリコの『哀れな白人』(2013年)の中にこんな言葉がある。「右派に関心をもつには貧しすぎ、左派に関心をもつには白人すぎる」。貧しさに対する嫌悪と、白人であるという誇りによって、既存の政党のどちらにも属すことができないのである。

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