運転席のダッシュボードに革命が起きている 車部品メーカーに激震
ビステオンによるソリューションの1つが、「スマートコア」と称するコンピューターモジュールだ。この運転席用ドメインコントローラーは、車両の計器パネル、情報娯楽システムなどの機能を、すべて単一の半導体上でコントロールする。
デトロイトに本拠を置くビステオンは今年に入り、金額は非公開だが、大口契約を2件獲得した。4月に発表された、中国第2位の自動車メーカー東風汽車との契約と、ロイターの調べによれば、もう1件はメルセデスベンツ<DAIGn.DE>との契約と見られている。ビステオンは、もう1社の欧州自動車メーカーが、2018年に同社システムの採用を計画しているという。社名は明らかにしなかった。
ビステオンは運転席用電子機器に全力を投じており、それ以外の車内環境や内装事業を昨年手放している。この賭けは今のところ奏功している。中国における成長に支えられて、ビステオンは今年第1・四半期には、15億ドル相当の新規契約を獲得した。ビステオンの株価は昨年50%以上も上昇している。
10年前にフォード<F.N>からのスピンオフとして誕生したビステオンにとって、これは大きな転機だ。ビステオンは2009年に米連邦破産法11条の適用申請を行っており、その1年後に再建された。
「迅速に変化し、適応する必要がある。そうでなければ、この市場にはついていけない」と語るのは、ビステオンでグローバル・マーケティング部門を率いるティム・ヤードン氏。「リードを維持するために、自ら生まれ変わるということだ」
ダッシュボード巡る闘い
ビステオンの再生は、デジタル化された運転席における確固たる地位を巡ってサプライヤーが今後繰り広げるであろう激闘を予感させる。各社が自動車メーカーに対する売り込みを強化するなかで、このトレンドに誘発された企業買収の動きが始まっている。
ビステオンは2014年、ジョンソン・コントロールズの車載電子機器事業を買収。韓国サムスン電子は3月、80億ドルを投じてインフォテインメント企業のハーマンを買収した。仏ブジョー傘下の部品子会社フォルシア<EPED.PA>は、昨年、パリに本拠を置くインフォテインメント企業パロット・オートモーティブの株式20%を取得。2019年までに同社がパロットの筆頭株主になる可能性がある。
自動車セクター全体に目を広げると、自動運転技術の開発競争が刺激となり、過去2年間、猛烈な勢いで企業買収が進んでいる。PwCによれば、自動車セクターによる企業M&A(合併・買収)は昨年、総額で410億ドルに達したという。
ダッシュボードの機能統合で先頭を走っているのはドイツの自動車メーカーだとアナリストは指摘する。アウディ<NSUG.DE>は昨年、計器パネルとインフォテインメント装置を統合した「バーチャル・コックピット」をいち早くデビューさせた。