保育園業界を蝕む「助成金不正受給」の実態 企業主導型保育の穴狙い、助成金ビジネスか

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銀行やスーパーが立ち並ぶ大通りに面した雑居ビルの2階の一室。入り口には、「24時間大切なお子様を一時預かりします(日、祝日もお預かりします)明るく楽しい託児ホーム」と書かれた、少し古びた看板がかかっている。チャイムを鳴らすと音は鳴るが、中に人がいる気配はない。電気とガスのメーターを確認すると、止められてはいないが、ほとんど動いていない状況だった。

一方、旧B園から歩いて3~4分の位置にある新B園(企業主導型)はマンション1階の一角にあるが、看板はなく、一見すると何をやっているのかわからない。ただ、テラスの部分に雨よけがあり、洗濯物がたくさんかかっていた。郵便受けを見ると、旧B園と同じ園名が小さく書かれてある。

「好ましくない状態」と指摘されたが…

実際、旧B園からは2017年5月8日時点で休業届が出されていた。B園によれば、休業の理由は、保育需要がないこと、そして保育士の確保が難しいことだという。旧B園は、11月末に園児がゼロになってからの約5カ月の間、開店休業状態を続けていたことになる。

前述のように、園児などを既存の保育園から新園に振り替えたと見なされる場合は、企業主導型保育の助成対象にならない。企業主導型保育を管轄する児童育成協会は、2017年3月時点でA社に対し「好ましくない状況なのでちゃんと運営してほしい」と伝えたという。それにもかかわらず、A社は旧B園を「空っぽ」の状態で存続させ、いずれ再開させるという前提で休園させることで、「看板の掛け替えには当たらない」と主張し、助成金を受け取っているのであろう。

A社は、不正の疑いがあるこうした手法で助成金を受けていることに対し、どう認識しているのだろうか。筆者は、A社に対して取材を申し込み、文面及び電話にて回答をもらった。

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