JR内房線ダイヤ改正「列車本数削減」の裏事情 「協議」巡り自治体とJR東日本の認識が不一致
列車の運行スケジュールは沿線自治体の意向が大きな影響を及ぼすと一般には考えられている。実際に鉄道事業者が路線の営業廃止をする場合には、沿線の自治体との合意は欠かせない。
JR東日本を例に取ると、東日本大震災で不通となった東北地方の地方交通線各線、それから2011年の豪雨で不通となった只見線の復旧に際してはこれら各線の沿線の自治体を中心に、本来は営業廃止を考えていた同社から一定の譲歩を引き出した実績ももつ。
一方で2017年2月上旬に富津市企画課の担当者に話を聞いてみると、いま挙げたイメージとは異なる状況であった。
内房線を管轄するJR東日本千葉支社は同線のダイヤ改正について、普通列車の時間帯別の本数減(廃止)について決定事項である旨、富津市に伝えてきたものの、具体的にどの列車かは教えてくれなかったという。詳しい時刻は2017年2月下旬発売の『JR時刻表』3月号に載るからそちらを参照してほしいと付け加えたそうだ。
という次第で、富津市の担当者は冒頭に挙げた内容の質問を筆者に寄せたのである。
詳しい時刻は聞いていない?
JR東日本が詳しい時刻を千葉県や富津市に伝えなかった理由として考えられるのは、2017年2月の時点で千葉県や富津市以外の沿線自治体と協議を続けていて、廃止となる普通列車の時刻、本数を確定させられなかったというものである。
しかし、ダイヤ改正に伴う人員や車両の異動・移動が実施の1カ月前になっても確定しないというのは異例だ。それに、筆者が確認したかぎりでは内房線沿線の自治体で個別にJR東日本と話し合っていたところは存在しない。
千葉県が設置した千葉県JR線複線化等促進期成同盟(会長は森田健作千葉県知事)が2017年1月31日に同社千葉支社に提出した要望書からもわかる。以下に引用しよう。
ダイヤ改正の内容・趣旨等について、各沿線自治体の要請に応じ、丁寧な説明、情報提供をしていただきますよう要望します。
利用者の利便性に直結するダイヤ改正の実施や、みどりの窓口の閉鎖等に際しては、事前の情報提供や周知徹底を図るとともに、検討段階において、地域の意見を反映する仕組みの創設について、御検討いただきますよう要望します。
期成同盟の主張をまとめると、ダイヤ改正で廃止となる普通列車の具体的な時刻を教えてほしい、そもそもその前に話し合いの機会が存在しないので設定してほしいとの内容となる。
利用者の減少が理由とはいえ、普通列車の廃止は学校の授業や病院の診察時間などに影響を及ぼす。富津市の担当者も「通学に利用する中学生、高校生をはじめ、住民の日常生活に大きな影響があるので内容はあらかじめ教えてほしい。地域の意見を反映する場を作るなど、JR東日本ともっと情報や意見を交換したい」と述べていた。
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