JR内房線ダイヤ改正「列車本数削減」の裏事情 「協議」巡り自治体とJR東日本の認識が不一致

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今度はJR東日本の主張に耳を傾けてみよう。2017年6月23日に開催されたJR東日本の株主総会では、多数の列車が廃止となった内房線の状況について株主から次のような質問が出された。質疑応答の内容は次のとおりだ。

株主:特別快速の廃止など内房線の路線は日中の路線が減便している。現地の方々と日中の減便を踏まえての代替交通手段についてどのような検討をしたのか。

これに対し、同社の川野邊修副社長は次のように回答している。

川野邊修副社長:限られた経営資源を有効活用している中でダイヤを決めている。お客様のご利用状況が低調な列車はご利用に見合った輸送力になるよう、輸送力を見直している。ダイヤ改正の都度、自治体と話し合いながらやっている。一方で、房総エリアは観光地である。地域と協力して良い商品をつくって送客している。今後もこうしたキャンペーンをやっていく。

 

以上からもわかるとおり、JR東日本としては内房線に限らず、列車の廃止を伴うようなダイヤ改正の際には沿線の自治体と話し合いを行っているとのことだ。同社の広報部に確認したところ、川野邊副社長の発言と同様の回答が得られた。

なぜ意見が食い違うのか

今回のダイヤ改正をめぐっては、富津市などの自治体とJR東日本とで意見がまったくかみ合っていない。ダイヤ改正前に行われたとされる話し合いについて、富津市は存在しなかったと言い、JR東日本は行ったと言っているからだ。

ただし、両者の言い分を聞いていると、ダイヤ改正前の話し合いというもののとらえ方が異なっているように感じられる。期成同盟の要望書にあるとおり、千葉県や富津市にとっての話し合いとはダイヤを策定する検討段階での説明、そしてその説明に沿った協議であり、世間でのイメージとも合致するであろう。

ところが、JR東日本としては決定したダイヤを沿線の自治体に連絡し、その結果を受けて作成された要望書を受け取ったことで話し合いが成立したととらえている節が見られる。

地方に限らず、大都市でも今後は少子高齢化の進展によって鉄道の利用者が減ることがほぼ確実だ。JR東日本としては自社の存続を図るため、適正な輸送力に改めて利益の確保に努めるのは当然ではあるが、沿線の自治体や利用者からは、利便性が悪化することについて、不満や将来への不安の声が挙がっている。

ダイヤを利用者にとって不利な方向に改める際には、JR東日本が作成した草案を基に沿線の自治体に適切な情報を提供し、納得のいくまで話し合うという進め方が理想であろう。しかし、同社はそこまでは必要ないと考えているようだ。JR東日本も準拠する鉄道事業法では第十七条で運行計画、つまりダイヤについて触れられており、ダイヤを変更する際には国土交通大臣に届け出ればそれでよい。となると、今回取り上げた両者の言い分は平行線をたどったままとなる。

今回取り上げた事象は今後全国各地で起きるに違いない。その際に個々の問題と片付けていてはいずれ収拾がつかなくなる。ダイヤ改正に際して鉄道事業者や軌道経営者は事前に沿線の自治体と話し合うべきか否か、話し合うとすればどのような方法を採るべきかというルールづくりは早急に必要だ。

梅原 淳 鉄道ジャーナリスト

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うめはら じゅん / Jun Umehara

1965年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊『鉄道ファン』編集部などを経て、2000年に独立。著書多数。

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