EUがグーグルに制裁金3000億円を下した理由 枢要を牛耳る米国ネット企業に危機感を抱く
こういった問題に対してECは、積極的に対策を行うべき注力分野を「消費者や事業者のオンライン上の商材に対するアクセス向上」「デジタルネットワークやサービスのための適切な環境構築」「経済および社会に対する成長機会の確保」の3つに分け、16の主要施策を打ち出している。これらの施策は、実施期限が明確に公表されており(実際には全体的に遅れているが)、基本的にECが取り行っている活動は、これらの主要施策に対し、何らかの形で沿うようになっている。
たとえば、ECは、今年5月に、流通や価格を契約で縛ったり、ジオブロッキングを実際に行っていたりする電子商取引事業者への調査結果を公表したが、これは主要施策の1つに「不正なジオブロッキングの撲滅」が掲げられていることを受けてのものだ。調査結果を公表すると同時に、ECはジオブロッキングについて、今後一層厳しい対応を行う方針を明らかにしている。
そして、これらの主要施策の中に「電子商取引市場における不当競争の調査」と「オンラインプラットフォームの役割に関する調査」の2つが掲げられている。これらは、一見ただの調査のように思えるが、この“オンラインプラットフォーム”の定義を見ると「デジタル広告プラットフォーム、マーケットプレイス、検索エンジン、ソーシャルメディアやクリエイティブコンテンツ公開のプラットフォーム、アプリ公開プラットフォーム、コミュニケーションサービス、決済システム、そしてシェアリングエコノミーのプラットフォームを含む幅広いもの」となっている。
グーグルが「目をつけられている」!?
これはある意味、露骨にグーグルのような米国企業によるオンラインプラットフォームを指している。実際、ECの調査によると、EU経済圏内のデジタル市場において、米国企業のオンラインサービスは全体の半分以上の規模を占めているという。その中で、検索エンジンにおいてEUのほぼ全域で90%以上のシェアを持ち、デジタル広告プラットフォームも持ち、最も支配的な立場にあると見られているグーグルが、ある意味「目をつけられている」のだ。
もちろん、検索エンジン市場と、今回ECから指摘されている「グーグルショッピング」のような、いわゆるショッピング比較サービスの市場は、それぞれ異なっている。だがECは、グーグルショッピングがEU経済圏内における複数のサービス事業者と明確に競合していると認識している。
そのうえで、グーグルショッピングが、EU経済圏内で支配的な立場にあるグーグルのインターネット検索結果のページ上で、目立つ形で取り扱われているということを深く懸念している。それは現在の消費者にとって、検索エンジンが情報の主要な窓口になっているからだ。言い換えれば、現在EU経済圏における消費者の購買活動や商取引は、EU外の一企業が支配的な立場に立ち、コントロールできる状況にあると解釈することもできる。これこそがECが最も危機感を抱いている点だ。
だからこそ、ECは「オンラインプラットフォーム」を含めたデジタル単一市場の構築を形にするにあたって、最大の障壁であるグーグルに制裁を加えるという決断を下したのだ。しかも細かく掲げた16の主要施策に対して、それぞれ明確に期限を公表しているので、ゆっくりとしてはいられない。今回ECが「行動に移した」背景には、ECの悲願達成に向けた確固たる意思表示があるのだ。
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