米韓首脳会談、結局「負けた」のはどちらか 懸念された両首脳の衝突はなかったが・・・

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文政権はこれによってミサイルと核実験を一時的に凍結しようとしているようだ。もし核問題に進展があれば、単一の経済コミュニティを創り出すという最終目標を持って、運用が停止された開城工業団地の再開だけでなく、共同経済圏の創設といった、大規模な共同経済計画が後に続くだろう。

が、文大統領のこうした考えは、トランプ大統領だけでなく、米国のほとんどの政策立案者の考え方と一致していない。それ以前に北朝鮮が韓国からの和平提案を受け入れたいという姿勢を示しておらず、人道支援の申し入れさえ拒否している。北朝鮮に関しては韓国の元高官の次の説明が当てはまるだろう。「文大統領が手にしているカードはなんだろうか? 金正恩(朝鮮労働党委員長)が望むすべてのカードはアメリカの手の中にあるのだ」。

北朝鮮問題が最も厄介

北朝鮮問題は、米韓関係において最も厄介な問題かもしれない。トランプ大統領は北朝鮮との貿易に関して非難する演説を行い、これには文陣営も明らかに不意を突かれた。訪問に先立って行われた下位職員らによる会談でそのような兆候は一見見られなかったからである。この会談の内容は公式の共同声明の中に穏当に反映されている。

また、晩餐会が終わった後、トランプ大統領は米国と韓国が「新しい貿易協定」に合意したとツイートしたが、この表明は声明の中に反映されてはいなかった。

この変化は、トランプ大統領の関心が北朝鮮から、愛してやまない国際主義的な貿易戦争の課題へと移ったことを示唆している。ニュースサイトAxiosによると、トランプ大統領の貿易政策は、鋼鉄、半導体、そして洗濯機といった家電製品など、ダンピングの事例と見なした物品に報復的な関税を課す用意をしているという。これによって、中国や韓国、他国も打撃を受けることが予想される。

文大統領が安全保障問題において米国と足並みをそろえ続けようと計画したにもかかわらず、貿易問題が日韓関係により大きな溝を生み出しかねないことが証明されるかもしれない。当面、韓国政府は今ある問題を回避しつつ、別の問題に備えるという状況に我慢しなければならないだろう。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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