米韓首脳会談、結局「負けた」のはどちらか 懸念された両首脳の衝突はなかったが・・・

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こうして、文大統領は現実主義路線を示すことに成功した。北朝鮮とTHAADをどう扱うかに関しては、少なくとも両国政府から出された共同政府には見られず、首脳会談での主要な話題とはならなかったのである。

文大統領はまた、日本を含めた3カ国間の安全保障協力を深めたいという米国の願いも後押しした。次回のG-20サミットに合わせてトランプ大統領と安倍首相との3カ国会談に合意し、また、戦争の歴史問題と広範な協力関係を分けて考え、日本に対しては二重政策を追求したいという自身の要求を強調したのである。元外交通商相の柳明桓氏は、韓国は「日本との関係を戦略的な相互関係へ変容する必要がある。そうすれば、成長している中国に対抗できるだろう」と話した。

北朝鮮へのスタンスは両極端

しかし、ワシントンでの会談は「一時的な収穫」になるかもしれない。両首脳が会談で見せた笑顔の影には、10年前の政権のイデオロギーの考え方を繰り返している革新政権と、米国の国家主義的な保守派体制との間に存在する隔たりを示すものや、緊張を示すものさえも多数存在したのである。

韓国での経験が長く、世宗学堂で現在世宗LSフェローを務める国務省の元高官のデビッド・ストラウブ氏は言う。「実際、北朝鮮との貿易をめぐるスタンスは、韓国と米国の政権は大きく異なっている。しかし、文政権はこうした溝を徐々に埋めようとすることにチャンスがあると信じている。そのため、両政権は互いの違いを基本的に覆い隠したいのだ」。

北朝鮮に関しては、文政権は韓国が指導力を発揮すべきだと主張しており、南北対話を追求する機会を明らかに模索している。この考えを韓国は共同声明に盛り込んでいる。6月末に開催されたソウル・フォーラムで文大統領の上級顧問である李洙勲氏は、「南北関係の改善においては、韓国はより活発な、指導的役割を担う必要がある」と語った。

文政権はすでに最初の一手を打っており、人的支援と非政府組織による活動の再開を許可している。また、文大統領は来年2月に主催する冬季オリンピックの南北共同チームを発足させるアイデアを明らかにしている。ある上級顧問によると、このアイデアによって、離れ離れになった家族が集まり、南北対話に欠かせない要素が満たされ、和解への機運が作り出される可能性があるという。

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