米韓首脳会談、結局「負けた」のはどちらか 懸念された両首脳の衝突はなかったが・・・
盧元大統領が懸念していたのは、これによって武力紛争が引き起こされたり、金大中体制下で始まった北朝鮮への対話やかかわりの動機が薄れてしまうことだ。盧大統領は、イラクへの軍隊の派遣や貿易合意の交渉など米政府の機嫌をとるための措置で米国との緊張を緩和しようと努めたが、韓国内でこれらは不評で、支持率低下の原因となった。
今の状況もこのときと似ている。朴槿恵前大統領の弾劾につながった同氏への激しい抗議に便乗して当選した文大統領は、有権者への期待に応える一方で、米国とのあからさまな不仲を回避する必要がある。韓国でトランプ大統領は深刻なほど人気がない。米世論調査会社ピュー研究所による最新調査では、韓国でのトランプ大統領の好感度は世界でも最低であるが、韓国ではほとんどがトランプ大統領を奇抜な人物であると考えており、驚異であるとはとらえていない。
一方、韓国の政治家たちは、主にトランプ大統領の予測不能性と衝動性に対して懸念を抱いている。トランプ大統領が北朝鮮の核とミサイルの脅威に非常に集中しているという事実は、韓国にとって励みであると同時に、悩みの種でもある。前政権の高官は筆者にその胸中をこう打ち明ける。「トランプ大統領が北朝鮮に対する軍事的選択肢を真剣に考慮していることが心配だ。文大統領の責任は、トランプ大統領が軍事的選択肢を採らないよう説得することだ」。
文大統領が見せた「大人の対応」
文大統領は今回の首脳会談で、この「目標」を達成するために最善を尽くした。文大統領は、米軍が実行した北からの避難活動のおかげで自分の両親がどのように朝鮮戦争を生き延びたかの話を何度も語り、自分の意に反して安保同盟を受け入れた。また、北朝鮮への制裁を強めるというトランプ大統領の強硬路線と、北朝鮮が核とミサイルの実験プログラムから手を引くまで北朝鮮への関与を拒否するという圧力とを受け入れたのである。
文大統領はまた、米国のミサイル迎撃システムである高高度防衛ミサイル (THAAD) の配備を中止するという、大問題になりかねない決定についても解決したように見える。文大統領は米議会関係者との面会で、配備の遅延は環境評価を実施する間の一時的なものであるとして納得させた。
ただし、文大統領は環境評価でTHAADの配備が1年以上延期される可能性があることは伝えなかった。また、THAADの配備を阻止するための中国による経済的なものも含めた「脅し」を受けることも回避。さらに、米国訪問の最終日には、米政府関係者らに中国からのこうした圧力に反対していること、そして、米国からも中国への説明を徹底させることを要請した。
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