相談役や顧問はいったい何をする人なのか 日本企業の弱点は「人への投資」が足りないこと

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藤野:今の日本企業は、投資不足が大きな問題です。投資といっても設備投資だけでなく、人に対する投資が少ない。たとえば日本企業の場合、研修というと新人や若手を対象にしたものが中心になっていて、管理職など上に行けば行くほど、研修が減っていきます。でも、本当に必要なのは、マネジメントに対する教育だったりするのです。日本企業を見ていると、現場は強いのに、なぜかエグゼクティブの能力が低いように感じます。だから、もっとエグゼクティブクラスを対象にした教育が必要だし、そこにもっと投資するべきではないかと思うのです。

企業価値だけでなく、物事の本質を見極める力がある。「草食投資隊」が個人投資家から支持されている理由はここにある(左からセゾン投信の中野晴啓社長、レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長兼CIO、コモンズ投信の渋澤健会長)

社員がHPに多く登場する企業は「人材投資企業」

渋澤:それこそが「見えない価値」の創造につながるはずです。社員に対する教育は、企業の長期的な価値創造につながるものなのに、なぜかバランスシートを見ても、そこに費やした金額は掲載されていない。すべて人件費というコストに丸められているのです。でも、企業の人材教育にかかったおカネは立派な投資ですよ。だから投資家も、自分たちが投資している企業は、いったいどういう人材投資をしているのかについて、もっと開示を求めるべきでしょう。私たちは企業との対話を通じて、企業の「最大の資産」である人材への投資の「見える化」を求めたいと考えています。

中野:日本企業は、人材育成にかかった費用を単純にコストとみなす傾向がありますからね。

藤野:実際、人材投資の金額はバランスシートだと見えてこないので、われわれ投資家がヒアリングしていくしかありません。ただ、疑似的には、その会社のホームページに、社員がどれだけ出ているのかを見るという手はあります。企業経営にとって大事なのは、「社員と顧客による永続的な価値創造」の関係なのですが、それがワークしていない企業は、ホームページに役員の写真すら載せていないケースが多いのです。なぜ載せないのかというと、顧客と対峙してコミュニケーションを取りたくないからです。

中野:会社がパブリックなものであるという認識が、日本の会社には欠けています。それに、経営陣の人たちも自分の仕事に自信が持てていないのではないでしょうか。「ローテーション人事」なんて、まさにその典型例ですよ。これまで広告部門の担当だった取締役が、次にCFO(最高財務責任者)になっていたりするのですから。CFOといえば、バランスシートの負債部門を管理するトップじゃないですか。高い専門的な知識を必要とする仕事なのに、それをローテーション人事で担当させるのは、どう考えてもおかしい話です。これこそガバナンスの問題ですし、無責任経営を増長させます。私の知り合いで、銀行の支店長を数店舗経験した後、ある証券会社の役員になった男がいるのですが、証券の知識なんて皆無ですよ。それなのに証券会社の役員なのですから、まさにローテーション人事の弊害としか言いようがありません。

渋澤:話が戻ってしまうのですが、確かに相談役も顧問も不思議な存在であるのは事実です。でも、会社にしがみつく気持ちも、わからないではないのですよ。たとえば私たちが80代になったとき、30歳くらい年下の人たちから、「もう、会社に来なくてもいいですよ」と言われたら、ちょっと寂しいですよね。実際、会社の創業者や中興の祖だったりするわけですし。

藤野:会社中心で働き続けて、ふと気づいたら、会社しか自分の居場所がなくなってしまった。だから、ずっと会社に来られる仕組みとして、相談役や顧問があるというのは、確かにひとつの側面ではあります。

中野:私自身、ほとんどの時間を仕事に費やしていますからね。リタイアすることになったとき、本当にきっぱりと会社を辞められるのかどうか。イマイチ、自信がありません。

渋澤:ここにいる皆、50代ですからね。そろそろ自分がリタイアした後の身の振り方を考え始めないとね。

草食投資隊 渋澤 健、中野晴啓、藤野英人

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そうしょくとうしたい

コモンズ投信会長・渋澤 健、セゾン投信社長・中野晴啓、レオス・キャピタルワークス社長CIOの藤野英人の3氏で結成。根底には、「長期投資を根づかせたい」という3人の熱い思いがある。「草食投資隊」という名前は、投資=肉食系というイメージが一見つきまとうが、本質は違うのではないか、という3人の共通の考えによる。

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