ミンダナオ紛争を戦った「キムラさん」の正体

日系イスラム戦士、「日本への思い」を語る

ミンダナオ紛争と和平プロセスについては「日本が貢献した『イスラム紛争終結』の舞台裏」をご参照いただきたい。MILFは総兵力1万1000人と推計される当地最大のイスラム勢力だが、その大半は常時武装しているわけではなく、いつもは村々で農業に従事し、有事には銃を取って戦う“半農半兵”である。

混同しないよう書き添えると、5月23日以降、バンサモロ域内のマラウィ市で大規模な衝突を引き起こし、戒厳令を招いたイスラム過激派「マウテ・グループ」はMILFとは別組織であり、MILFは政府と包括和平合意(2014年3月)を結んで和平プロセスを推進している。

祖父は和歌山出身の電気技師?

さて、キムラ一族の来歴をたどってみたい。日系人であることを証明する公文書は残っていないが、それは戦後フィリピンに残留した日系2世や3世に共通しており、何ら不自然ではない。

キムラ本人と家族の聞き取り調査で確認できたのは、「キムラ1世(祖父)は1918年(大正7年)頃、日本からミンダナオ島ダバオに渡って来た電気技師」ということ。残念ながら「Risky Kimura」なる当地での通称しかわからず、肝心の日本名が判然としない。“Risky”は「冒険的な」とも訳せるが、もしかしたら「利助」とか「理介」だったかもしれない。

母親のイレニア・キムラ(家族提供)

出身地は当初「Yakayama」と言っていたが、繰り返し発音してもらって「和歌山」のことだと気づいた。和歌山は明治時代から戦前にかけて、沖縄などと並んで海外移民が盛んだった県のひとつだ。戦前の渡航記録を調べると、和歌山からフィリピンに渡った南方移民はそれなりにいる。あるいは「岡山」もありうるが、和歌山の可能性が高い。

ミンダナオ島最大の都市ダバオは、ロドリゴ・ドゥテルテ現大統領の地元として知られる。戦前・戦中はアバカ(マニラ麻)産業などに従事する2万人規模の日本人が居住し、東南アジア最大の日本人街があった。記録では、ちょうど大正7年頃からダバオに渡る日本人移民が増加している。

戦前のダバオの祭りに登場した日本人会の山車(PNLSC提供)
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