セクハラに暴言…永田町「秘書イジメ」の実態 豊田真由子議員が特別にヒドイわけではない

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「委員会で質問するから質問を作れと言われたのですが、どうしたらいいですか」

このような相談の電話が筆者のもとにいきなりかかってきたこともある。大物議員の政策担当秘書として採用された男性からだった。その男性は別の国家試験に合格していたものの、政治の世界への憧れが強く、秘書になることを選んだ。だが給与の半分以上がピンはねされ、東京での住まいは議員と同じ宿舎で、24時間身の回りの世話をしなければならかった。

「ずっと議員がそばにいるので、新聞を読む時間さえない。勉強する時間がまったくないのに質問なんて作れるはずがない。でも作らないと『能力がない』と叱られる」

半泣きだったその男性はその後、秘書を辞めて故郷に戻った。そして公務員になったと聞いている。

その他にも、外では優しい議員を装いながら事務所内で常に秘書を大声で怒鳴る自民党の議員や、秘書の些細なミスをひとつひとつ取り上げてネチネチと人格攻撃する議員もいる。

「議員会館の事務所で2人だけいて、『あなたはこんなこともできないの?バカじゃない?そう思わない?バカでしょ?バカだよね?』と責めるように何度も言われると、自分が本当にどうしようもない人間のような気がしてくる」(後者の議員の秘書)。こうなれば、もはや陰湿なイジメと言っていいだろう。

ある有名政治家の事務所では、かつて他の事務所の秘書と口をきくことを禁止され、名刺すら作らせてもらえなかったという話もある。ほとんど何もすることなく1日を過ごすというのは、ある意味で拷問に近い。

豊田議員は本当に離党するのか

男性秘書への暴行・暴言問題で話題となった豊田議員だが、この際は、告発した秘書の勇気を称えるべきだろう。秘書の立場は弱く、たいていは泣き寝入り。筆者が聞いた話も「実名は出さないでほしい」という条件付きのものばかりだ。

豊田議員は22日に自民党本部に離党届を提出している。加計学園問題などで自民党に逆風が吹き、都議選に影響が及ぶことを懸念したことによる措置だが、まだ党紀委員会にかけられておらず、正式に離党が決定したわけではない。

一部では「被害者の元男性秘書と示談が成立すれば、離党届は取り下げ」や「都議選の結果が自民党にとって悪くなければ、離党届は取り下げ」などとも囁かれているが、自民党がこうした不祥事と決別するつもりならば、早期に結論を出すべきではないだろうか。 

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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