「年末113円からドル高円安が本格化する」 シティグループ証券の高島修氏に聞く

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この問題は賃金が上がれば解決するだろうが、ルールどおりに行かないのは、リーマンショックの影響はやはり大きかったので、トラウマとなり、メンタリティの問題として、賃金は上がりにくくなっているのではないか。日本の経験からすると、こうした影響から脱するには20年、30年という長い時間がかかるのではないか。

――利上げによる大きな悪影響は想定されますか。

従来はFRBの利上げが米国の景気のとどめを刺してきた。レバレッジ(負債比率)が膨らんだ状態で、利上げで債務負担が拡大したからだ。しかし、現在の米国は債務が非常に抑制されている。だから景気の拡大も緩やかなものにとどまっているともいえる。米国経済の内部から引き締めが頓挫するほどの減速、崩壊が起こることはないだろう。

問題は新興国だ。リーマンショック以降、レバレッジが高まったのは、アメリカ国内ではなく中国やブラジルといった新興国だった。しかも借り入れのある程度はドル建てで行われている。FRBの利上げから来る景気の減速が、アメリカ国外で発生して、外需やエネルギーセクターを通じて表面化してくることはあるだろう。そういう意味ではFRBの利上げは難しい。

減税政策の財源はレパトリ減税が濃厚

――トランプの経済政策はどのような形になるのでしょうか。

トランプの政策で重要なのは減税だが、現在は財源の問題を抱えている。オバマケア代替法案がなんとか成立したとしても、国境調整税は共和党保のフリーダムコーカス(Freedom Caucus、伝統的保守派の集まり)が反対し、否決されるだろう。現在、財源として考えられるものとして、財政赤字、減税による経済成長で結果的に税収増を図るダイナミックアカウンティング、レパトリ減税(海外から国内に利益を還元させる場合に減税対象とする)がある。特にレパトリ減税は税収の増加が期待でき、ドル高・株高要因にもなるので、ここに政策の軸足を移すことになるだろう。ただし、ロシアゲートの影響で年内に実行するのは難しくなった。来年のどこかでは決定するだろう。

北朝鮮であれ、ロシアゲートであれ、市場は不透明要因を嫌う。だからトランプが失脚したほうが市場にとってはいいのかもしれない。不透明感がなくなり、マイク・ペンスが大統領になるなら市場からすればウェルカムだ。しかし、トランプの支持者が圧倒的に多いことも踏まえると、来年11月の中間選挙前に共和党が民主党と結託して弾劾というのはないだろう。マーケットはこの不透明感とは付き合っていかないといけないだろう。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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