「年末113円からドル高円安が本格化する」 シティグループ証券の高島修氏に聞く

拡大
縮小

これは米国にとっても大きな問題となりうる。中国が減速すれば外需は悪化し、原油安はインフレの抑制にもつながってしまう。シェール産業も苦しくなる。こうした背景から、米国としては中国に利上げをさせたくないと考えている。中国の利上げを回避するためにはFRBが利上げしないのがいちばんだ。バランスシートの縮小を優先することで利上げを見送ることができる。

特に9月は共産党大会があり、アメリカとしては9月の利上げスキップは必至だろう。こう考えると12月も利上げを見送る可能性も否定できまい。中国は元がドルにリンクしている事によって、ドルブロック圏に入ってしまっており、FRBは政策運営においてドル―人民元ブロックを意識しなければならなくなっている。

1ドル=125円を超えるような円安になると、中国の競争力が落ちるので、中国の通貨切り下げなどの話も出て、資本流出など自己実現的に問題が拡大する。過剰な円安は起こさないでくれというのが「中国の中央銀行」であるFRBから日銀に対する要請だろう。

足元の経済指標の弱さは続かない

――米国の経済指標は足元が弱いのではないでしょうか。

6月については利上げをすると言って、市場もすでに織り込んでいたということがある。ただ、経済指標の下振れが続いているのは事実だが、数字そのものがそれほど弱いとも思わない。鶏が先か卵が先かという議論で、今は経済指標が悪い、ドルは安い、金利も下がるという状況になっている。この原因は昨年の11、12月のドル高と金利上昇にあり、期待先行の市場の変化が実体経済に悪影響を与えてきた。今は、実体経済が下振れしたことによって、米国の長期金利とドルが下がって、株はすでに上がり始めている。今度は、そのポジティブな効果が実体経済に反映されていくはずで、悲観するような状況ではない。

――失業率はまだ改善するという見通しになっています。

少し違和感がある。最近注目されているが、雇用統計の翌週に公開されているJOLTS(Job Openings and Labor Turnover Survey)という求人指標によれば、現在の求人件数は600万件を超えており、集計開始以来最高水準を記録している。求人が多いのに雇用が伸びないということは、ミスマッチによって構造的失業率が高まっている可能性があるということだ。FRBは今回構造的失業率が下がっているという見方を示したが、説明できない部分がある。

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