日本のCEOは技術革新を生き抜く自信がない 不透明感の原因は地政学リスクだけじゃない

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数年前まで「技術立国」などと持てはやされていた日本に何が起きているのか。この間に生じたのは「技術の質」の変化だ。日本における調査結果をまとめた、KPMG/あずさ監査法人の宮原正弘アカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部長は、そう指摘する。

「日本企業が秀でているのは、生産などのプロセスにおける技術改善が中心だった。だが、最先端のテクノロジーはAI(人工知能)やブロックチェーンなどを組み合わせて、ビジネスモデルそのものを変革していく技術。日本企業はその流れに十分に乗ることができていない」(宮原氏)

危機感はあるが投資を行っていない

こうした状況を反映しているのだろう。「破壊技術に関するCEOの懸念事項」という質問に対して、「自社が最新技術に追随できていない」という回答が日本では79%に上った(グローバルでは47%)。同じ質問に対し、「自らの経営判断の基となるデータの品質」と答えたCEOも日本は78%と多かった。

「ビッグデータをタイムリーに、正確に、意味のあるものとして分析する技術に対する投資が追いついていない。米国の経営者のほうがデータの有用性を認識し、人材も含めた投資ができている」(同)

何が彼我の差を生んだのか。宮原氏は「最近の日本の経営者は、効果が目に見えない投資を控える傾向がある。経営陣の感度が強くないと、ビジネスモデルの変革につながる技術への投資に時間とおカネを割かない」と分析する。

破壊的な技術に危機感を覚えているが、それに十分対応できていないのが多くの日本企業が置かれた現状だ。日本のCEOが対峙すべきは、制御不能な地政学リスクではなく、自らの変革を阻害する"内なる敵"なのかもしれない。

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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