マイナス成長脱した、欧州景気の持続力は? 景気・経済観測(欧州)

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①財政引き締め

厳しい財政緊縮で危機国では深刻な景気後退が続いている。失業増加や生活困窮で社会的な緊張が高まるなど、行き過ぎた緊縮による弊害も目立ち始めた。そこで欧州各国は過度な緊縮で景気が窒息しないよう、現実的な政策運営に舵を切っている。

欧州委員会は5月、スペインやフランスなどに対して、財政健全化の達成年度の先送りを認めた。だが、達成年度の先送りはそれ自体が成長促進や雇用創出につながるものではない。単年度でみた財政の緊縮ペースは弱まるが、財政再建は引き続き短期的な景気の下押し要因となる。

②雇用情勢

ユーロ圏の失業率は足元で12.1%とユーロ圏発足以来の最悪水準にある。中でもスペインやギリシャの失業率は25%を超え、就業の意志を持つ4人に1人が失業している計算だ。これは大恐慌時の米国の失業率に匹敵する。

単一通貨圏では為替調整による輸出競争力の回復が難しい。競争力の回復には、労働生産性の回復か人件費を削減するしかない。危機国は構造改革に取り組んでいるが、すぐに成果が出るものではない。足元で単位労働コストが低下しているのは、もっぱら人件費の削減によるもので、競争力回復の皺寄せが雇用・所得環境に及んでいる。

③銀行貸し出し

ユーロ圏の非金融企業向け銀行貸し出しは6月に前年比マイナス5.1%と、14カ月連続で前年割れを記録した。資金需要の低迷に加えて、銀行の貸し出し抑制姿勢が続いている(図表2)。ユーロ圏の銀行で4~6月期に「貸し出し基準を厳格化した」と回答した割合は、「緩和した」と回答した割合を引き続き上回っている。

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