疑いなき末期症状、「逆送の福田新体制」

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疑いなき末期症状、「逆送の福田新体制」

塩田潮

 福田首相がやっと内閣改造を実行した。狙いは支持率回復と政権基盤強化で、期待どおりの効果が表れれば、この布陣で解散・総選挙を断行する腹だろう。各紙の支持率調査の数字は大幅増から横這いまでばらつきがあるが、全体的には「回復傾向」である。
 だが、どの内閣でも、野党とマスコミの追及にさらされる国会会期中は支持率が低迷し、外交や人事で独自色を示す機会に恵まれる閉会後は持ち直すのが一般的パターンだから、「改造の効果」と断定はできない。政権基盤強化も、挙党態勢の確立など腐心の跡が見えるが、小泉改革路線との決別、財政再建派の大量登用で、逆に弱体化の火種も抱え込んだ。

 福田首相は現段階では、自身で総選挙断行、与党で過半数確保して続投、民主党の内紛誘引でねじれ解消、来秋の総裁再選、という絵を描いているはずだ。自公体制が前提だから、来夏の都議選との接近を嫌う公明党に配慮して、総選挙は来年1月までに行う気だろう。だが、支持率低迷なら、このシナリオは崩れ、解散前の退陣もあり得る。麻生氏はそこに望みをつないで幹事長を受諾した。ポスト福田の一番手ながら、実際は手詰まりだった。福田体制で総選挙となり、勝てば福田続投、負ければ民主党政権で、どっちに転んでも出番はない。ここは「一蓮托生」も覚悟の上で福田体制入りするしかなかったのだ。

 与党は態勢立て直しに懸命だが、自民党崩壊、公明党離反の流れは止まりそうにない。残る期待は9月の民主党代表選での亀裂拡大だが、総選挙を勝ち抜くには、敵のつまずき待ちではなく、「ニュー自民党」の将来像と達成目標の明示が不可欠だ。
なのに、「逆走の福田新体制」からはその意識も意気込みも感じられない。疑いなく末期症状である。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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