「北斗の拳」のザコが舞台で主役を張れるワケ 「世紀末ザコ伝説」が映す人気作品の世界観

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

また、2.5次元はアニメや劇場版に比べると低予算で開催できるという事情もある。

テレビアニメの場合、1話当たり最低でも1200万円以上かかり、1クール(12話)完成させるだけでも億単位の費用が必要となる。劇場版アニメの場合は数十億かかるケースもある。

それに対し、舞台化のコストは約1000万~2000万円と格安だ。会場の収容人数の関係で売り上げの限界値も低めになるものの、手堅い企画として開催できる。今回の『北斗の拳』のような「とがった」企画も打ちやすい。また、原作ファンのほか、役者のファンがリピーターになる率が高く、ビジネスモデルとしては安定している。

北斗の拳の「世界観」を支えるもの

とはいえ、どんなにローコストでも集客が見込めない企画は実現できない。実際、舞台化のほとんどは原作エピソードの再現や人気キャラクターをメインに据えたスピンオフだ。また、2.5次元の客層には20~30代女性が多いことから、イケメン俳優やイケメンキャラクターを重視する傾向もある。

そんな中、『北斗の拳』の舞台化は流行の逆をいく。キャラクター人気にも、女性層の集客にも頼らないという、舞台化企画の常識をひっくり返す企画だ。

『北斗の拳』のザコたちは、名前もなければ活躍の機会も与えられない。出てきて数コマでケンシロウに倒され、振り返られもしない。彼らは存在するだけで価値がある。生きていても、倒されても価値がある。グーグルの画像検索で「世紀末」を検索すれば、彼らの笑顔が画面を埋め尽くす。舞台化のサブタイトル「世紀末ザコ伝説」は、その実『北斗の拳』という作品の本質を言い当てている。

染宮 愛子 ライター/漫画シナリオ研究家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

そめみや あいこ / Aiko Somemiya

1982年、宮城県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、研修会社のコピーライターとして就職。広告宣伝および研修企画に携わり、6年間で会員制クラブの会員を約5倍強にし、数十万単位の高額セミナーを定番商品化させる。また、仕事の傍ら趣味のパロディ小説執筆を続行し300本以上を書きあげる他、アマチュア作家の展示即売会『コミックマーケット』に8年連続出展する。コピーライターの知識、漫画ストーリーの分析力、小説を執筆してきた経験を元に独自の『愛され続けるコンテンツの本質』『時流にのったキャラクター・ストーリーの活用法』を考案。執筆活動及び講演活動を行っている。 公式サイト:http://chimakoro.xii.jp/

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事