イラクでの「IS敗北」で米国が手に入れる果実 14年間かけた闘いの成果はあったのか

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武器はISとの戦闘で用いるためのものだが、トルコはこの民兵組織自体をテロリストに認定している。米政府は、古来よりクルド人のものであったと主張している土地をトルコから奪還するために民兵組織が戦闘を始める前に、彼らを非武装化する方法は考えていないようだ。

こうした中、現在の焦点は「クルド人が何らかの国家的地位を宣言するか否か」 ではなく、「クルド人が自らの領土的主張を通すための過程でトルコとの戦争に打って出るか」になってきている。米国・トルコ両政府が築いてきた絆は、レジェップ・タイイップ・エルドアン首相の権威主義的弾圧政策によって弱まっているので、米国としてはクルド人の欲求を認め、状況を見守るつもりなのかもしれない。

クルド人は、トランプ大統領にとって重要な米国における数々の保守組織で尊敬されている一方、トルコ人の存在感は小さくなっている。クルド人が利権を握る石油は、米政府にとってありがたいものだろうし、クルド人も米政府との密接な安全保障における連携をつねに重視してきた。強力な米国―クルド同盟は、イランを監視する点でも、トランプ大統領には都合がいいはずだ。

イランとは微妙な関係に

一方、シーア派民兵を対IS闘争に取り込んだオバマ時代の便宜的な結婚は、トランプ政権下でも続くだろう。

2014年以降、米国は、シーア派民兵を支援するイラクの中央政府に対する抑止力として振る舞うことを躊躇しなくなっている。イラク軍がISの登場によって「崩壊」するという危機にあって、戦闘を行うことができる勢力が必要とされる中、クルド人支配地域以外で「使える」唯一の勢力がシーア派民兵だったのである。

米国にとって問題なのは、シーア派民兵の多くがイランに対し固い忠誠を捧げていることだ。イランも民兵組織の武装を支援し、さまざまな特殊部隊と指導力を駆使しつつ彼らの活動を助けている。2006年ころからのポスト侵攻期において、米国とイランはイラク内部の支配をめぐり暗闘を繰り広げてきたが、今の米国にとってシーア派民兵はISを倒すのに必要な存在だと認めざるをえなくなっている。

今後、イランがイラクにどのようにかかわってくるかは、時が経たないとわからない。しかし、今のトランプ政権には、多くの米国人が領土保全のために命を懸けて戦ってきた地に、イラン人が軍靴で踏み入る様はおもしろくないはずだ。いずれにしても、イラン政府とシーア派民兵の恩恵に頭が上がらないイラク政府と交渉せざるをえない状況は、喜ばしいものではない。

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