世界のエアラインが「尖ったPR」を競うワケ こぞって独自のイメージ戦略に注力

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最新のシューズが欲しい学生と、もっとまめに帰省してほしい両親。両者の“ニーズ”をうまくすくい取り、ユーモアでラッピングした。シンプルだが、フランス人らしいウイットに富んだアイデアだといえるだろう。エールフランス航空はこのキャンペーンによって、学生向けチケットの売り上げを前年比200%まで増やすことに成功した。

最後は、冒頭のヨルダン航空でネタにされたトランプ大統領の国、アメリカだ。アメリカは航空大国として知られ、数多くの格安航空がしのぎを削る。今回紹介するのは、その中の1社であるジェットブルー社が実施した「フライベイビーズキャンペーン」である。

同社が注目したのは「機内で泣きやまない赤ちゃん」の存在。リサーチしてみたところ、赤ん坊の両親たちはつねに周囲に対して気を使い、神経をすり減らしていることがわかった。では、どうすればすべての乗客に快適に過ごしてもらえるのか。

「フライベイビーズキャンペーン」とは?

ジェットブルー社は、母の日に「すべてのママと赤ちゃんのために」というスローガンを掲げ、「赤ちゃんが泣くたび、次回搭乗時のチケットが25%割引になる」というキャンペーンを実施した。機内には航空券の値段が表示されたカウンターが設置され、赤ちゃんの泣き声が上がると、価格が下がる。1人が泣くと、また別の赤ん坊が泣く。

赤ん坊が泣くたび、機内には歓声が上がる。母親も思わず(*^▽^*)になる。6時間のフライトを終える頃には、すべての乗客の航空券が無料になる。観客たちはスタンディングオベーションで喜び合うというフィナーレ。その様子はメディアで拡散され、さまざまなメディアが取り上げ、世界中で話題になった。ちなみに、ジェットブルー社のFacebookページには4万5000件もの「いいね!」が寄せられた。また、同社て定期的に実施している利用動向調査によると、利用意向は86%まで向上したという。

『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

このように、非常にユニークでウイットに富んだPRが世界中で展開されている。戦略的に情報発信することによって他社と差別化し、自社のブランディングを行っているのである。こうした戦略PRを成功させるには、今回ご紹介した「かけてとく」を含めた「6つの法則」がある。詳しくは新刊『戦略PR 世の中を動かす6つの法則』をご覧いただきたい。

さて、ここまで世界の航空業界におけるPR事例をみてきたが、日本の航空会社はどうなのか。広報関連のニュースとして記憶に新しいのは、ANAの「社長交代会見」が招いた混乱だろう。日本では、PRというと「守り」のイメージが強いが、ピンチをチャンスに変えるのもまたPRの仕事だ。今後、あらゆる業界でますます競争が激しくなっていくことを考えると、日本企業も海外を見習い、ぜひ斬新でクリエイティブなPRを仕掛けてほしい。世界を舞台に戦っていくうえで、戦略PR力の向上は必須条件なのである。

本田 哲也 本田事務所代表取締役、PRストラテジスト

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ほんだ てつや / Tetsuya Honda

「世界でもっとも影響力のあるPR プロフェッショナル 300 人」に 『PRWEEK』 誌により選出されている。「PRWeek Awards 2015」にて「PR Professional of the Year」受賞。1999年に世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法人に入社。2006年ブルーカレント・ジャパン代表。2019年より現職。著書に『戦略PR 世論で売る。』(アスキー新書)、『その1人が30万人を動かす!』(東洋経済新報社)など。国連機関のアドバイザーなどを歴任。世界最大の広告祭カンヌライオンズで公式スピーカーや審査員を務めている。公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)理事。

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