世界のエアラインが「尖ったPR」を競うワケ こぞって独自のイメージ戦略に注力
乗客を機内から引きずり下ろすショッキングな映像が世界中に拡散――。記憶に新しい米航空大手、ユナイテッド航空の「炎上」は、PRの失策の影響も大きいと指摘されている。しかし本来、世界の航空業界のPRはユニークで機知に富んでいるものが多い。
航空業界はもともと、差別化が難しい。機体はもちろん、フライト時間は基本、変わらない。機内で快適に過ごしてもらえるよう、サービスに力を入れるといっても、限界がある。では、何で差をつけるのかといえば、戦略PRなのだ。
戦略PRを成功させる6つの法則のひとつに「かけてとく」がある。これは、ウイットや頓知にみられる、機知とリアルタイム性に富んだコミュニケーションのことで、日本のPRにまだまだ足りない部分でもある。世界各国の航空会社の中には、実にこの「かけてとく」が際立つ、クリエイティブなPRを実施している企業がいくつもある。では早速、その最新事例をめぐる旅に出掛けてみよう。
ロイヤル・ヨルダン航空の反トランプPR
まずは、中近東へ飛ぼう。ロイヤル・ヨルダン航空である。昨年11月、ドナルド・トランプ米大統領がまだ共和党の大統領指名候補だった頃、イスラム教徒の米国入国を禁止することをにおわせ、世界中の耳目を集めたのは記憶に新しい。ヨルダンは人口の9割以上をムスリムが占める。当然、ヨルダン航空としては、トランプ氏の発言は遺憾で許しがたいものだった。しかし、同社は抗議する代わりにあるキャンペーンを実施した。
「彼が勝ったならば……まだ入国できるうちに米国へ旅行を!」というキャンペーンを開始したのである。内容はごくシンプルだ。行けるうちにアメリカに行っておこう。米国便の航空料金のディスカウントも行った。さらに驚かされるのが、そのスピード感だ。トランプ氏の問題発言からわずか24時間後には、キャンペーンの内容がヨルダン航空のフェイスブックページに用意されていたのである。
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