巨大漬け物工場に潜入! ”カイゼン””手作業”が支える業界トップシェア

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巨大漬け物工場に潜入! ”カイゼン””手作業”が支える業界トップシェア

日本人の毎日の食卓に欠かせない漬物。その漬物を生産するピックルスコーポレーションは、セブン&アイグループ向け販売が売り上げの5割強を占める。親会社は「きゅうりのキューちゃん」を販売する東海漬物。その東海漬物を抜いて業界シェアはトップだ。浅漬け生産などを目的に「東海デイリー」として1977年に発足。当時300店舗に過ぎなかったセブン−イレブンと取引を開始した。セブンの出店地域拡大に合わせ、ピックルスも各地の有力企業と合弁会社を設立するなど供給地域を全国に広げ、成長した。現在、関東を中心に福岡や広島、旭川にも生産拠点を持つ。その関東地区の中核となる拠点が所沢工場だ。

埼玉県所沢市--。田畑の広がる風景の中に、ひときわ目立つ巨大な工場。ピックルスコーポレーション所沢工場だ。ピックルスの主力商品、浅漬けを製造している。全国各地からトラックで運ばれた野菜は常時10度以下の冷蔵室に集められる。浅漬けの主原料となる白菜やキャベツ、きゅうり、隠し味に使用するリンゴも山積みだ。段ボールには「○○農園、○日入荷」などと、生産者名と入荷日を表示した大きなカードが付けられる。

 ピックルスは入荷した野菜の使用期限を独自に定めている。カードで商品の鮮度情報を「見える化」し、管理ミスを防止しているのだ。段ボールから取り出された野菜は下処理に回される。10人ほどのスタッフがムダのない動きで白菜をさばき、大根も大きな包丁で次々と切り分けていく。ベルトコンベアーに流され機械で洗浄した後は、髪の毛、ゴミなどの混入がないかスタッフが細かくチェックする。巨大なスライサーで一口大に刻んだ野菜をコンテナに詰め、調味液を加えて漬け込む。浅漬けなど短いものは1日、長いものでは1週間ほど漬け込み、熟成させるという。その後、パック詰めと袋詰めの工程を経て全国のセブンやイトーヨーカー堂などに出荷される。

工場内を見渡すと、機械以上に手作業よる工程が多いことに気づく。皮むきや汚れのチェックにはじまり、コンテナに野菜を詰め、運搬するのもスタッフだ。セブンで販売する「キャベツの浅漬け」は、一つ一つ計量してパック詰めしている。毎週数多くの新商品を投入するコンビニ向けは、商品改廃のスピードが早く、機械化できない工程も多い。パック商品は見た目の美しさも重要だ。最後は必ず人の手が必要になってくる、という。

 機械任せでないことから、作業の仕方に関する創意工夫や改善が日々求められる。そのため、工場の廊下には何枚もの「作業改善レポート」が貼られている。内容は、野菜によって包丁の柄の部分を色分けするなど、現場の細かな作業が中心だ。近年は売り上げ増加で工場の稼働率も上昇している。手作業が多い分、細かな改善点を積み上げることで、工場の効率化に活かしているのだ。

漬物業界は厳しい状況に置かれている。家族経営の会社を中心に、毎年100社ペースで社数が減少している。ピックルスの業界シェアは、現在4%強程度で長期的に10%程度のシェア獲得を目指している。国産商品のアピール強化など、安心・安全の取り組みを積極的に展開していく方針だ。荻野芳朗社長は「最近は牛肉の産地偽装や冷凍食品の問題など、消費者は食の安心・安全に対し敏感になっている。工場での鮮度管理はもちろん、契約農家からの調達拡大など、トレーサビリティ(生産から市場に流通するまでの経路を追跡し、確認すること)に注力している」と話す。

現在ピックルスは、セブン&アイ以外にも、全国規模の有名スーパーから地方の中堅スーパーまで商品を供給しており、他社メーカー商品の卸販売も展開する。また高級焼肉専門店「叙々苑」と共同開発した叙々苑キムチの拡販に加え、ふろふき大根や国産生野菜を使用したナムルなど、総菜分野の商品開発にも力を入れている。
(田邉 佳介 =東洋経済オンライン)

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